これらの口コミは、こだまひろしさんの主観的なご意見・ご感想です。あくまでも一つの参考としてご活用ください。
また、おすすめメニューとその金額はこだまひろしさんが任意で登録したものです。お出かけ前は、必ず電話等でご確認ください。 詳しくはこちら...
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根津駅至近に位置する、文字通り、「昭和」を体現する「正統」的な喫茶店。
事務所に向かう散歩のついでに、スポーツ新聞を開きながら、モーニング\390をいただいたり、あるいは、ちょっと早めのランチ軽食(といっても結構ボリュームがあるのだが)として、カツカレーセット\850(ランチ時)、もしくは、スパゲティセット\800(オールタイム)なんぞを注文し、本日こなすべき仕事の手順のシミュレートを行ったり、または、現実から逃避すべく文庫本を開いたりなど、無為の時間を過ごすために、私にとっては大変貴重な存在である。
モーニングは、トースト+ゆで卵+珈琲の極めてオーソドックスなもの。寄る年波のせいか、食後に、卵独特の、うぇっ、と来るような、ムカツキを感じることがある(これは当店に限らない)のだが、そこがまた、正統たる所以。カレーのルーはどうってことないが、ご飯がおいしいし、とんかつも柔らかい仕上がりで、この手のカフェメシじゃ上等の部類。
特筆すべきは、ナポリタンと珈琲。注文を受けてから調理するのだが、フライパンから香りたつケチャップの芳しい匂い、マッシュルーム、ハム(ベーコンなんか決して使わない)、玉葱とともに、うっすら焦げ目のついた逆アルデンテ状態のスパゲティ(決してパスタなんかじゃない)、そしてこいつに、粉チーズをこれでもかと言わんばかりに大量に投入し、フォーク一本(スプーンなんぞ最初から提供されない)で、食らいつくと、口の中全体に、毒々しいケチャップの色と「昭和」の味が広がるのだ。そして、珈琲は、「鍋」で煮立てて器用に注がれる。これまた、最近の「洗練」とはまったく別の、安っぽい、ジャンクな味が郷愁をそそる。
個人的には、ナポリタンはもう少し太目の麺でフニャフニャに仕上げ、珈琲はもうちょっと温めにしてくれたら、これ以上望むことはない。
店内の一階席――二階もあるようだが、上ったことがない――の様子は、奥のカウンター四席ほどと、四人がけのテーブル席が七つ八つ配されており、三十名近くは収容できるだろうか、紅蓮の布帛に覆われたいささか草臥れた椅子や、固い扇型のプラスチックに覆われた安っぽい品書き――なぜかウイスキーまである。もちろん銘柄は「オールド」!――、厠の扉の上部に置かれた今でもつくのかどうか判らない古ぼけたTV受像機、ダイキンの業務用冷暖房機、おそらくUSENを利用した背景音楽が、まさに、前陛下の時代にはどこにでもあった喫茶店の光景を今なお具現化しつづけており、壁には斜めに傾いたステンドグラス製のランプや、クリムトの複製画――問い質したわけじゃないがまさか本物じゃあるまい――がよりいっそう雰囲気を盛り上げてくれる。
厨房はご年配のおそらくは御夫婦と思しき男女が交代で担当し、サーブは娘さんだろうか、過剰な愛想こそないものの、食事の後に珈琲を出すタイミングなどを見る限り、なかなかの目配りである。ちなみに、どこぞのふざけたカフェとは大違いで、ランチタイムに入る前に注文し、会計時間がそこに食い込んだセットメニューが、サービス料金で提供された。
休日に観光目的で出向いて楽しい店じゃないが、いつまでも永く地元客に愛されんことを強く望む次第。