これらの口コミは、こだまひろしさんの主観的なご意見・ご感想です。あくまでも一つの参考としてご活用ください。
また、おすすめメニューとその金額はこだまひろしさんが任意で登録したものです。お出かけ前は、必ず電話等でご確認ください。 詳しくはこちら...
- :料理・味、
- :サービス、
- :雰囲気、
- :使った金額(夜)/1人
- :使った金額(昼)/1人
- :おすすめシチュエーション

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わが身の恥をさらすようですが、こだまがレビューを開始した「本当の動機」は、
単に「ネットマイルが欲しかった」だけでした。
過去の食べ歩きのストックも豊富ではなく、記録もほとんど残していないので、最初は月に50軒も食らえるだろうかと心配しましたが、最近になって漸く「食らうスピードよりは、その印象を表現する技術/考えをまとめる時間の方が足らないこと」と「ネットマイルじゃ割が合わないこと」に気がつきました。
開始当初は、自らを省みて書きとばしも多々あったように思いますが、途中から、ああでもない、こうでもないと推敲・愚考を重ねた上で、丁寧に書き上げるよう――実のところ、一本書くと貧弱なこだまの脳味噌はかなり消耗してしまいます――心がけたつもりです。
なんとかたどり着いた記念すべき――四国霊場巡礼になぞらえると――八十八軒目のレビューにふさわしい店として、当店を取り上げることとしました。
実のところ、公開、いや「レストラン新規登録依頼」さえ、かなり迷ったのですが、極めて主観的には「媒体露出はほとんどないものの、呑兵衛にとって名店――安易な出版社がよく使う陳腐な表現を借りると、人には教えたくない――中の名店」であること、こだまが所蔵する数少ない美食系書籍のひとつ(名は伏せさせていただきますが、信頼のおける良書。当店初訪後に出版された初版を持っています)の影響からか遠方からの来訪者が増えつつあるように思われること、店の看板には「千客万来」――どことは言いませんが、媒体に出まくっている癖に女人禁制などという時代錯誤の単なるマーケティングを平気で行う老舗とは違い、女性のみの来店も可能です――、と表示されていること、居酒屋を愛する人で未訪の人には是非とも訪れていただきたいと考えたことから、レビューに踏み切りました。
店主はかなりご高齢の婆さん――通称「おせん」、本名は行けばわかることなので書きません――で、当店を一人で切り盛りしています。
メニューは極端に少なく、品書きもありません。日本酒は昭和三十三年開店以来変らぬ「初孫」のみ、焼酎は「鳴門金時」(芋)、「安心院蔵」(麦)、あとは国産ビールが数種。おつまみに至っては「おでん」の他には駄菓子しかありません。
店舗の佇まい/内装は絶品ですが、それのみをもって「他の老舗」に比肩しうるものなし、とまではいきません。
店自体も極端に狭く、カウンターが5席と小さな座敷があるのみ、厠に至ってはいったん店舗外に出る必要があります。おでんや酒が供される器も趣味はよいものの値段の張るように見えるものは何もありません。
当店を「名店」たらしめている「重要な要素のひとつ」は、至芸とも言うべき店主の接客/語りです。どこにも無理がなく、奇を衒ったり、特定の御客に寄りかかったりすることもない絶妙のバランスを伴った静かな語り――言問通りを通過する自動車の轟々たる音とも不思議と調和している――は、正直なところ、林○こぶ平――風の便りでは、最近お偉くなられたように聞きますが――など足元にも及ばぬ「極私的人間国宝」であり、絶品の佇まいと相俟って、何の変哲もないおつまみさえこの世のものとは思えない珍味に変えてしまいます。
こだまは、この店に来ると「必ず」――実のところ、訪問回数は二三度しかなく、平成18年3月某日に伺った直前の訪問は当店至近に住みついていた七~八年のことなのですが――身体の奥底から「なにやら得体の知れぬもの」――感動という言葉を使うことが陳腐としか思えません――が少しずつ静かに沸き起こってきて、普段は滅多にしない「記憶を失うような駄目な飲み方」をしてしまいます。
一応、お店のレビューなので、料理や接客や雰囲気を記しましたが、当店の「本当の魅力」は、そういった「個別の要素には決して還元されない」「正体不明の名づけえぬもの」――「最良」の料理/飲食店/文学が必ず備えているもの、そしてそれこそが「最良」たらしめている摩訶不思議な何か――だと思います。
花見のピークも過ぎようとしている平成18年4月2日深夜、
生まれ変われるのであれば「おせんさん」が飼っている猫になりたいと半ば本気で夢想する、文士崩れ、こだまひろし、記す。