これらの口コミは、こだまひろしさんの主観的なご意見・ご感想です。あくまでも一つの参考としてご活用ください。
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朝焼小焼だ 大漁だ
大羽鰮の 大漁だ
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何万の
鰮のとむらい するだろう
(金子みすゞ「大漁」より引用)
八月某日深夜、一緒に墓参に訪れた弟が「もう一軒飲みに行きたい」と言い出す。宿でのカラオケ(!)付夕食を済ませた後であり、正直なところあまり気が進まなかったのだが、ふらふらと表に出る。
宿の前の薄暗い道路沿いに当店の看板「炉ばた いさり火」がぼうっと点灯しているのが目に入る。看板に近づいてみたが、入口が見つからない。時計はすでに12時を回っており、閉店しているのではないかと危惧したが、漁港に面した反対側に回ってみると、人の気配が漂っている。どことなくうらぶれた雰囲気の階段を上り、2階の入口へ。
多少の不安はあったものの、他に行くあてがあるわけもなく、勇を奮っていざ入店すると、意外なことに店内にはテーブル席に二組ほど先行客がいる。
まだ営業しているのか尋ねると「深夜2時まで」とのことだったので、カウンターに陣取ることに。少しばかり薄汚れた店内をつらつら観察するとどうやら「地の海産物」――仙崎は山口県にあっては下関に次ぐ第二位の水揚高があることになっている――を中心に炉端焼きを供する居酒屋のような感じだったのだが、ネタはあまり豊富ではない。女将さんによれば、生憎の台風のため、仕入れが思わしくないとのこと。
小分けされたネタを眺めて、
・豚バラ大串
・牛カルビ
・鰮(刺身)
・獺祭
を注文する。
意外といっては失礼に当るかもしれないが、豚バラ・牛カルビは程よく脂が乗っており結構旨い。また、酒にもよく合う。鰮の刺身は「正しく」当地の流儀に従い、「酢醤油」でいただき、これまたしみじみと旨く感ぜられる。
・アスパラベーコン巻
・鰮(天麩羅)
を追加。
アスパラは標準。鰮の天麩羅はやはり当地の流儀に従い、酢醤油でいただく。これも酢醤油との相性がよく、酒が進む。気がつけば、先客はいなくなり、冷蔵ケースに残っていた獺祭(約4合)は空になり、焼酎に切り替えることに。
酔いの回った弟と女将の会話によれば、「関東某地出身の女将さん」は「昭和四十年代初期に当地に嫁ぎ」、ほどなく「常連相手の当店を開店」し、彼是三十年以上になるとのこと。私のおぼろげな記憶によれば、当地の「街としての活力」は一貫して低下し続けているはず――女将の話によれば、元々市場の開く午前2時まで市場関係者相手の営業が中心だったが、現在ではサラリーマン(公務員)客が中心のようである――であり、常連客に支えられた商売を継続しているのは大変立派なことだといわねばなるまい。
店を出たのは閉店定刻を遥かに越えた午前3時近く。一見かつ酔漢の弟の取りとめのない話をしっかりと受け止めた接客には好印象。会計は二人合計で6000円を切る程度でリーズナブル。不義理ばかりで当地から遠ざかっていた私だが、次回墓参の際には、是非立寄りたいと思った一軒であった。