人が心をこめて作った料理に文句つけるやつぁ誰だ!
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カツ玉牛(カツ玉)
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周囲の学生用の食堂に比べれば、贅沢な食事の価格であった。独特の油のにおい。店構え。先代の親父さんが、仕上げのカツをまな板で切る「ザクッ」と言う音。これらすべてを胃袋に押し込んだ。
卒業後は、空前のバブル期。
大手銀行に勤める友人と2ヶ月に一度位のペースで近況報告を兼ねて三品で食事をした。注文もバブルの恩恵。迷わず「中カツ玉」。
この中カツ玉が食えなくなったら「青春は終わり」という共通の想いがあった。
日々のノルマに終われ、上司に怒鳴られ、顧客に詰られた日々を、カツと牛メシと一緒に飲み込み、学生時代と自分たちが変わっちゃいないことを確認しあった。
その後、僕は独立した。友人は業務が忙しく三品にも行かず、連絡も年賀状のやり取りぐらいになった。
僕はそれでも半年に一度ぐらいはここで中カツ玉を頼んだ。
いつの間にか先代の親父さんはカウンターからいなくなって、今の親父さんが立つようになった。でもカツを切る包丁の音、リズムは変わっていないことに安心する。
崩壊したバブル後での自分の将来の不安を苦い調味料として食べた。
更に10年。
スーツ姿のおじさんは珍しいからか、今の親父さんも僕をみると目顔で挨拶する。特に会話はしない。
出される水が冷えていることに驚く。
周囲の色紙は、いつの時代も変わらない後輩たちの「馬鹿さ」加減を伝えている。
今、二カ月に一度のペースで通う。付近の大病院で定期的に血液検査をし、その結果、コレステロール値もγGDP値も血糖値も尿酸値も問題ないことを確認した後に通っている。
「おれは、小さくまとまってないだろうか」
そんなことを考え、「大カツ玉」を注文してみる。
親父さんがカツを切っている音が響く。
皿が届く。
いつものにおいが懐かしい。
福神漬けを皿に盛る。
卵を割って、カツと絡めて牛丼を口にする。
胃が、次の一口を求める。
大丈夫だ。次の一口。大丈夫だ。
皿は空になった。
多少胃がもたれそうな予感はあるが、でも大丈夫だ。
ふと
「今度、中学生になる息子を連れてくるか。」
そんなことを考えて、店を出た。
また来るだろう。
「わが青春に食い残しなし。」だ。
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BGMは是非ボブ・シーガー&シルバーバレットバンド
「AGAINST THE WIND」
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