さくら田(ふぐ、すっぽん/麻布十番)

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さくら田
さくら田 (4)
(ふぐ、すっぽん / 麻布十番)

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 十二月に入り河豚(ふぐ)も本格的な季節となった。走りの十月頃には、小指の先ほどしかなかった白子も大きくなって、今月から料理屋に出回り始めた。待ち兼ねた白子を味わおうと師走最初の食べ歩きは、麻布十番にある河豚料理店「さくら田」を予約しておいた。

 本日は店の開店時間の午後五時に合わせ暖簾を潜った。というのは、河豚料理店は殆どの店が喫煙であり、客の喫煙率も高く何回か不愉快な思いをしていたからだ。河豚好きは、煙草好きも多いようである。

 私は繊細な「ふぐ料理」の風味と紫煙は全くそぐわないものだと思っている。煙害から逃れるため、午後五時に入店し客達が押し寄せる午後七時過ぎには撤収してしまおうとの心積もりであった。

 ここ「さくら田」は既に四十年以上の歴史があり、九州は福岡出身のご主人と女将が客達を持て成してくれる。訪れた店内は六席ほどのカウンター席と五卓二十席ほどの小上がりと座敷がある。案内された床の間前の座敷に座ると、そこかしこに、盛んであった頃の店の歴史と昭和時代の面影を強く感じ取ることが出来る。

 今の時期、店の河豚コースは二万三千円の一コースのみ。河豚は最高級といわれる「玄界灘、三年物の白とらふぐ」を供してくれるとの事だ。コースの内容は、「お通し、手毬寿司、煮凝り、ふくさし、唐揚げ、ふくちり、雑炊、デザート」となる。コースに連れと私の大好物である「焼き白子」時価(百グラム八千円)も追加してもらった。

 ビールで喉を潤している間に、お通しの「白子豆腐」が出される。絵つけ小鉢に入れられた豆腐は僅かな一片で希少なものである事が窺える。そっと口に含むと絹のような白子の舌触りと大豆の香りが相俟って美味い。

 今日は、地唄の師匠をされているという粋な女将は教授のため不在であり、ご主人に接客して頂いた。その物腰は誠に丁寧で真心をもって客に対しているのが伝わってくる。この店の主人は、なんの外連味もない御仁であった。

 二品目「手毬寿司」はフグの上品な甘みが酢飯と良く合った逸品である。フグと御飯の間には紅葉おろしと小葱が入っている。堪らずに炙った天然トラフグの尾鰭が入った「ひれ酒」を貰う。この店の丁寧に下処理され十分に乾燥させた尾鰭は、三合位は芳ばしさが消えないようだ。

 三品目の「ふくの煮凝り」は、湯引きされたふぐの皮と身皮がたっぷり入る。河豚のゼラチンの食感は良かったが、味付けが薄くぼやけているように感じられた。

 青磁の丸皿に孔雀盛りにて「ふくさし」が供された。厚めに引かれたふぐさし、背中の皮、腹の皮、とおとうみ(身と皮の間のゼラチン質の皮膜)など。薬味は鴨頭葱と唐辛子を強く効かせた紅葉おろし、橙のポン酢で賞味する。身が透き通ったようなフグ刺しは、歯応えも旨みも極上の一品である。この店のポン酢も私は大変美味しいと感じた。

 壁には「ひれ酒の そろそろ恋し 宵の口」と書かれた色紙が飾られている。その恋しい「ひれ酒」を三杯四杯と重ねていった。

 五品目「ふく唐揚げ」河豚本来の味を損なわぬよう極めて塩味を控えている。唐揚げは甘く芳ばしい。好みでカボスを絞り抹茶塩をつける。

 六品目「焼き白子」こんがりと焼き色のついた熱々の白子である。クリームのように滑らかで旨みは濃厚だ。芳醇な白子を味わいながら、五杯目のヒレ酒を含むと心は至福の時となる。

 ご主人が自ら作る「ふくちり」には、河豚のアラ、椎茸、エノキダケ、白菜、春菊などが入る。心のこもった賄いで、お碗に盛って数回に分けて供してくれた。

 「ふくちり」を終えたあと、残った出汁で「ふく雑炊」をつくる。薄味を付けて卵でとじれば、究極のオジヤが出来上がる。連れと二杯ずつ掻っ込んで完食した。「デザート」は林檎とキウイであった。

 昔より河豚の本場であった馬関(下関)や豊前(福岡・大分)では「ふぐ」は「不遇」に通じると「ふく」と呼んでいた。現在でも、福岡出身の「さくら田」や銀座やま祢では「ふく」(福)と呼んでいる事は興味深い。

 ここ「さくら田」は、銀座福治、新橋ふじ岡、六本木味満んなどと対峙できる東京河豚料理の名店であろう。店は当日も予約客で満席であったが、他の客達は七時半過ぎから来店ということで、思わく通りに、きれいな空気の中で極上の「ふく料理」を最後まで堪能できたことは幸せであった。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/


店名 さくら田さくらた
最寄駅 麻布十番
ジャンル ふぐ、すっぽん
住所 東京都港区麻布十番1-3-13 (地図を見る
TEL 03-3585-4402
夜の口コミ
'06/12/13 ('06/12訪問)
  • ¥30,000 ~
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