これらの口コミは、東京食道楽さんの主観的なご意見・ご感想です。あくまでも一つの参考としてご活用ください。
また、おすすめメニューとその金額は東京食道楽さんが任意で登録したものです。お出かけ前は、必ず電話等でご確認ください。 詳しくはこちら...
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今年の夏は尋常でない暑さである。暑気払いに、しばらくぶりにスッポンでも食べにいこうと思った。八月の下旬、根津の「山中旅館」の中にある中国料理店「古月」を訪問してみた。会席中国料理で知られるこの料理店の実力は、支店の古月 新宿店を伺ったことがあるので知っている。
中国料理を基本として独創的な料理を提供する「古月」のおすすめに、スッポンのフルコースがある。中国では「五畜(鶏・羊・牛・馬・豚)の美味を兼ねる」と言われるスッポンの料理を楽しみに、東京メトロ千代田線、黄昏の根津駅に降り立った。
駅から地図を頼りに、夏の終わりを告げる祭囃子を聞きながら、昭和の雰囲気が残る寂れた商店街の中をうらうら歩いていくと「山中旅館 古月」に辿り着くこができる。途中連れと立ち止まり地図を眺めていたら、花束を抱えた老婦人に「どちらをお探しですか」と声を掛けられた。下町根津の御婦人は親切である。婦人が指し示した直ぐ二軒先に「山中旅館」の明かりがぽつりと見えた。
鄙びた竹造りの門や繋がる竹塀をめぐる石畳を歩んで、昭和の初めに建築されたという和風の家屋に入った。ふっと郷愁を感じるような玄関を上がり、廊下続きの洋室の個室に案内される。六十年も前に開業されたという旅館洋室を改装した部屋は、粗雑なつくりは拭いようもないが、ひっそりとした空気が全体を包みこんでいる。
ここの店内はすべて個室となっており、「夜のコース」は、六千五百円から二万円まで、「スッポンコース」は一万円、一万二千円、一万五千円などがある。医食同源をコンセプトとした養生料理のコースも魅せられるものがあったが、当日は一万五千円のスッポンのフルコース(要予約)をお願いしてあった。
エビスビールで喉を潤し、芳醇な香りの茅台酒を舐めながら料理を待った。この店はビール、紹興酒、白酒、日本酒、ウィスキー、焼酎、リキュールなど酒の種類は豊富である。係りの熟年マダムに「スッポン料理に合うお酒は」と尋ねると、「やはり白酒(パイチュウ)か、紹興酒です」と教えられたので、紹興加飯酒を常温にて注文した。
本日供された料理はつぎのとおりだ。
・スッポンの煮こごり
・スッポンの肝の四川風
これは美味い。スッポンの肝や腸と長葱が、微塵の葱や唐辛子などでピリ辛風に炒めてある。両脇に木耳と胡瓜やセロリ、赤ピーマンの細切りが添えられた。
・スッポンのエンガワの炒め物
スッポンのエンガワとは、甲羅の縁の軟骨のエンペラのことである。コラーゲンの宝庫といわれる湯引きされたエンペラを、細切りの牛肉、椎茸、大蒜の芽、赤ピーマンなどと炒めてある逸品料理だ。
・スッポンの煮込みオイスターソース
大ぶりの鼈肉を椎茸やベビーコーンなどと牡蠣油で仕上げてある。ブロッコリーとエリンギが添えられる。トロトロの鼈コラーゲン、ホクホクの大蒜、シャキシャキしたエリンギなど相性の良さが印象的な美味な一皿である。
・スッポンの土鍋古月風
「フグとスッポン」は大の好物なので、時季になるといつも楽しみにしている。関東風のスッポン料理は、「生血」、「煮こごり」、「刺身」、「唐揚げ」、「丸鍋」、「丸雑炊」などのフルコースとなり、関西風は「丸鍋」と「丸雑炊」のみとなる。どちらもメーンは「鍋」と「雑炊」である。
古月風の「丸鍋」は、素材の旨さを一番に、調理をやり過ぎず、スッポンの風味を強く感じることができた。生姜仕立てのスープは、やさしい味わいで絹傘茸との相性も極めて良い。肉は、首、前足、胸骨、尻肉や脂肪がたっぷり付いた後ろ足など、多種の部位が供された。
・スッポンの蒸し物
・雑炊
スッポンだけでは味がキツクなるとの事で、鶏肉と豚肉とスッポンから出汁をとったスープの雑炊である。雑炊は鶏の風味が強く感じられたが味は良かった。
・デザート
鼈ゼリーとマンゴーシャーベットのココナッッミルク
中国料理を土台にした独創的なフルコースは、全八品どれもが美味しく感じられ、「スッポンは五畜の美味を兼ねる」という言葉の意味が理解できた気がする。滋味豊かで、さっぱりとした味の「古月」のスッポン料理は、調理手法こそ全く異なるが、荻窪の名店四つ葉のスッポン料理にも匹敵する妙味があるように思えた。
「其の滋味の優逸なるは多くの食品中第一に推すべし(美味求真)」、お勧めしたい中国料理店である。
ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/