東京食道楽のレストランガイド
鯛の飯に鯛の魚 鯛も鮃も食うた者が知る
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十日程前に、町田にある四川料理店随息居の料理を味わってみたら、そこの山下直敏氏と直城氏が父子で修行されたという「上野毛 吉華」を訪ねてみたくなった。路線を二回乗り換え、上野毛駅で下車する。環状八号線沿いを五分程歩いていくと道端に赤い看板が見える。
看板の色は四川の名店に相応しく、唐辛子の色彩をイメージさせる深緋色だ。古い建物の階段を二階に上ると料理店がある。店内は昭和の雰囲気を感じさせる設えである。ホールには大小九卓のテーブルが並べられ、そのキャパシティーは四十席程であろうか。サービススタッフは三名の熟年の中国人女性、そして四名の料理人達が客を持て成してくれる。
この店の久田大吉シェフは、日本に四川料理を紹介した陳建民氏の高弟であり、その料理を引き継がれておられるとの事だ。晩のコースは五千円と七千円の二種類があり、あとはアラカルトとなる。予約の時に七千円のコースを頼んでおいた。瓶ビールで乾いた喉を潤し、香り高い茅台酒を楽しみながら料理が運ばれるのを待つ。
供された料理はつぎのとおりだ。お酒は十年物の紹興酒を常温で貰った。
①前菜三種「もやしの湯葉巻揚げ」「棒棒鶏」「煮鮑」
(湯葉巻揚げはチリソースで味わう。バンバンジーは、掛けられた胡麻風味の辛いソースが旨い。煮鮑の味付けは濃目だ。前菜でありながらボリュームは十分である。)
②「鴨の燻製の揚げ物、蒸しパン添え」
(随息居のコースでも供された料理だ「樟茶鴨子」。樟のチップとジャスミン茶を使い、その香りを身と皮に移してある。鴨は、蒸され、燻され、揚げられている。花椒と塩が風味を効かせている。旨いのだが量が多い。)
③「帆立の炒め物」
(帆立をマコモ茸、グリーンアスパラ、葱などと炒めてある。凡庸な一品だ。)
④「牛肉細切り甘味噌炒め、中華風クレープ添え」
(甜面醤の味付けは逸品、炒められた具をパオピンという薄皮に包んで味わう。パオピンは一枚しかなく、もう一枚追加した。)
⑤「殻付き大海老、四川唐辛子、カシューナッツと甘草炒め」
(これは美味い。沢山のザク切りにされた唐辛子を除きながら食べる。切れのよい、突き抜けるような爽やかな辛さを感じる。目の下から汗が吹き出してくる。クセになるような辛さだ。)
⑥「フカヒレと冬筍、椎茸の細切り煮込み」
(一口含むと甲殻類の出汁を強く感じる。旨さと生臭さが紙一重の品だ。連れは二口でギブアップ、仕方なく二人前を私が頂いた。「魚のアラ汁」にフカヒレが入っているような風味である。既に満腹状態となった。)
⑦「麻婆豆腐」「御飯」
(「辣」ラーは、かなり強いのだが、痺れるような「麻」マーの風味は弱く感じられる。「辣」と「麻」がアンバランスのように私には思えた。期待していただけに残念である。麻婆豆腐といえば、渋谷セルリアンタワーの陳の麻婆豆腐は逸品であったような記憶がある。早い時期に再訪し確かめてみようと思う。)
⑧「担々麺」
(満腹でも、辛い担々麺はするりと食べられる。しかし、ここの麺は水分が抜けているような食感であった。)
⑨「杏仁豆腐」
料理は七千円というコース価格に見合った素材を十分に提供していた。そして当日のコース料理は、大食漢の私達でも、きつかったほどのボリュームがあった。普通の食欲の方は、アラカルトで適量を注文された方が無難なような気もする。
女性スタッフは常にテーブルに気を配っておりサービスレベルは、まずまずだと思った。久田シェフは頻繁にホールと厨房を往復されて、料理は殆どお弟子さん達が作られていたようである。その為か厨房で作られる料理の順番がバラバラで、コースのメニュー通り提供されなかったのは残念であった。
ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/