東京食道楽のレストランガイド
鯛の飯に鯛の魚 鯛も鮃も食うた者が知る
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夕刻に西新宿は「パークハイアット東京」40階に在る日本料理「梢」を訪問してみた。「梢」は、このホテルが直接に経営している店舗である。その為か、天井は吹き抜け様式で造られており驚くほどに高い。それに合わせる様に一面に大きなガラス窓があり、ホール全体から副都心の街並みを遠くまで見渡すことが出来る。惜しみなく空間を造ったデザインは、贅沢な雰囲気を醸し出しており、その居心地はすこぶる良さそうだ。
ここの晩のコースは、一万三千円、一万八千円、二万三千円と、「しゃぶしゃぶ」をメインにした一万六千円のコースなどがある。当日は一万八千円の「匠」を注文してみた。先ずは生ビールで喉を潤す。冷酒は、爽やかな辛口の新潟の銘酒「〆張鶴」を頼む。
本日供された料理は、つぎのとおりである。
①先付二種「活鱧焼霜、白瓜梅肉黄身酢」「赤烏賊京造り、莫久来叩きおくら柚子」
(骨切りは完璧な鱧の焼霜造りは、皮だけをサッと炙り殆ど生で供された。赤烏賊は凍らせ削ぎ切りにされたソルベ状である。「莫久来」バクライとは「海鼠腸」コノワタとホヤの塩辛だ。此れ程、日本酒に合う肴はあるまい。選んだ小さめの盃のピッチが上がり、徳利が、どんどんと空になっていく。二本目の冷酒は、やわらかな喉越しの長野の名酒「真澄みやさか」を貰う。)
②椀盛り「江の島椀」
(「江の島」との名に因んで、サザエや肝、黄ニラ、椎茸、葱など沢山の具が入り、背油と胡椒で味を調えてある。汁に対し具の量が大変多く、そっと含んでみると塩の風味のみで、出汁の余韻は殆ど感じられない。)
③造り「鮪トロ、真子鰈、秋刀魚」
(三本の氷柱が立てられ、ザク氷を敷き詰めた大きな器に刺身が並べてある。蓮の葉と華などで華麗に飾り付けられている。大鉢や大皿にて供し、客の目前にて取り分ける手法は、ここの大江料理長が得意とするところだ。真子鰈と秋刀魚の刺身は旨かったが、中トロの品質はあまり良くは思えなかった。)
④八寸「鱧ずし、鱧子煮凍り、蛸柔煮、河海老香煎揚、穴子八幡巻、土佐トマト、合鴨ロース、玉子カステラ」
(美味だったのは、穴子八幡巻と玉子カステラ。後は極めて凡庸な品々に感じられた。三本目の冷酒は、この店オリジナルの「梢 琵琶の長寿」300ml瓶を頼んだ。滋賀で造られたフルーティーな酒だ。)
⑤焼物「米沢牛岩塩焼、万願寺鶏油焼」
(米沢牛焼は塩味が濃すぎるように思える。そして牛肉は筋が多い。添えられた柔らかく厚みのある赤色と青色の万願寺唐辛子焼は、大変美味しく感じられた。)
⑥進肴「加茂茄子苺煮」
(加茂茄子と雲丹、共地餡が掛けられている。)
⑦食事「かつお冷し汁ご飯」
(係りより「先ずは一口そのまま召上ってから、冷汁が御飯にヒタヒタになる位に浸して召上って下さい。」と説明があった。冷汁は赤だしの上澄みを掬って作られたものだ。これは漁師が夏場に船上にて作る「沖なます」を原形とした料理であろう。「鰹の漬け」と御飯に冷汁を掛けて、掻っ込んでみる。美味しい。
嘗て大海原に老漁師と二人で出漁し、鰹の大きなナブラ(一群)に遭遇した事がある。見渡す限りの水面に、何千尾という鰹の群れが跳ねていた光景を思い出す。記憶を辿りながら、冷し汁御飯をかっこんで少し幸せな気分となった。)
⑧デザート「トマトの塩アイスクリーム」
(半分がバニラアイス、半分がトマトで作られた塩アイスクリームだ。アクセントに黒豆が三粒添えられる。トマトの塩アイスは、なんとも形容し難い味だ。このアイスは私の口には全く合わない。)
一流ホテルの上層階という好立地に在る為か、当日、広い店内は殆ど満席の盛況である。観光客や外人客の姿も見受けられる。男女の客席係りは、このホテルの従業員の為か若いサービススタッフの方が多いが、そのサービスレベルはまずまずだと感じた。
そして料理全体の印象は、使用されていた食材については、コース価格(一万八千円)に見合った食材を提供していたようには思えなかった。料理も凡庸な味わいの品が多かったように感じた。当日の私の満足度は六分位である。秋になるとスペシャル鍋として「ハモと松茸の鍋仕立て」などの料理が供されると聞いた。その時期を楽しみに、機会があれば再訪するつもりである。
ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/