2回
2024/02 訪問
香りの魔術師 〜群馬の名店〜
群馬にもこんなイタリアンがあったのか!
そう驚かされたオステリア ティーポゼロゼロ。
オーナーシェフは地元群馬の出身で、広島で修行された小保方シェフ。
6年前この地にお店をオープンし、当初は伝統的なイタリア郷土料理を提供されていた。
しかし現在は地元客のニーズに合わせた、個性的なモダンイタリアンへと変貌している。
モダンイタリアンと言っても再構築の様なアプローチはせず、素材を重ねる足し算や掛け算のお料理。
特に印象的だったのは香り使いのセンス。
ほうれん草の根のソテーは、ほうれん草の葉のソースにクミンを合わせた一皿。
カレーやエスニックに使われるイメージが多いクミンだが、ほうれん草の根の香ばしさと大地の風味と好相性で、ほうれん草の葉のソースの柔らかさをキリッと引き締めている。
また山菜使いにも秀でていて、蛤と酒粕ソースやシジミと雲丹のパスタで用いた蕗の薹は、心地良い苦味と春の香りが堪能出来る逸品。
足せば足すほど重ねた素材の調和は難しくなるが、どの料理も食材本来の風味を壊さず調和させた見事な仕上がり。
元はジェラートを学びにイタリア留学されたというシェフの、フレーバー使いのセンスと経験が生かされたお料理ではなかろうか。
アラカルト中心のメニューだが、この日は当日直前予約であったためお任せコースを注文。
素晴らしきお店との出会いに感謝!
(以下は頂いたお任せコースのメモ)
・金柑、ベルガモット、人参、人参のピュレ
・自家製加工肉の盛り合わせ。
・蛤、菜花、蕗の薹、酒粕ソース
・自家製カンパーニュ
・シジミと雲丹、蕗の薹、酒盗のパスタ
・白子のソテー 酒盗の塩、カリフラワーのピュレ
・ほうれん草の根のソテー
ほうれん草の葉のソース モッツァレラ、クミン
・穴子のフリットと発酵トマト
穴子と椎茸のソース 生ハムとトリュフ
・海老のカダイフ、発酵トマト
自家製パンチェッタ、ローズマリーとマジョラム
・抹茶のムース ピスタチオのジェラート
はっさくと金柑
2024/04/20 更新
冴え渡る才気とセンスは、まるでレスピラシオン。
変幻自在の料理構成と引き出しの深さは、まるでトゥ・ラ・ジョア。
名店たちの料理を彷彿とさせる、若きマエストロのコンチェルトに今宵も酔いしれる。
卓上のキャンバスに描かれるのは、個性的かつ独創的な美と味の現代アート。
小保方シェフは伝統的イタリアンのバックボーンを持ちながらも、
和の食材と現代料理を高次元で融合させたイタリア料理界のモディリアーニ。
古典イタリアン原理主義者の筆者も惚れた、至高のモダンイタリアン。
前回は当日直前1名予約のアラカルト組み合わせコース。
それでも強烈な印象を与えてくれたオステリア・ティーポ・ゼロゼロ。
今回は人数を集めた事前予約訪問で、初めて当店の真価を知った。
控えめに言って「最高」
恐れずに言えば「当店を知らずしてモダンイタリアンを語るべからず」
今回のコースはドルチェも合わせて全11皿。
どれもが忘れ難いお料理だったが、特に印象的だったのが魚料理のセコンドピアット。
鰹のたたきにナスのペーストとナスの皮のパウダー、発酵レモンのソースを合わせたお料理は、
鰹の薫香と焼きナスの皮の香ばしさが鼻腔に抜ける官能的な一皿。
初鰹らしいフレッシュ感のある風味と、プリッとした身の締まりを損なわない上品な薫香。
優しい甘みのナスのペーストと濃厚でまろやかな酸味の発酵レモンが、料理の奥深さを何倍にもして楽しませてくれる逸品。
アンティパストのスナップエンドウとキャビアの料理も秀逸。
しっとり系のムースや軽いエスプーマなどスナップエンドの料理方法を変えることで、
同じ食材でも風味や食感のコントラストが楽しめる白眉の一皿。
公共交通機関のアクセスの悪さや、大通り沿いの物語性に欠けたロケーションといった問題はあるものの、
ミシュラン三つ星店や食べログGold店と比較しても全く遜色のない内容と満足感。
飛行機や新幹線を乗り継いでも、旅の目的になる稀有なレストラン。
※ワインは食べ友さんのコレクション持ち込み
最初のスパークリング(フランチャコルタ・ブリュット)はお店のリストから
【今回のお料理メモ】
・ミニトマト30個分のジュース
遠心分離した様な薄黄色。
・スナップエンドウとキャビア
・自家製加工肉
・群馬産筍、青森産雲丹ソース、花穂
・桜マス、山菜、酒粕
・稚鮎とジャガイモ、キャビアのルッコラソース
・牡蠣とスダチのカッペリーニ
・鰹、茄子、発酵レモン
・群馬牛ヒレ 黒ニンニクソース
・春菊と浅利のカルナローリ リゾット
・ドルチェ
(お土産)
・イチゴのコンフィチュール
・甘夏のコンフィチュール