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2位
1回
2017/03訪問 2017/04/22
堂々たる木造建築、歴史を語る混浴湯。内容充実の部屋食も嬉しい、大人のための一軒宿!
[群馬県みなかみ町]
2017/3/26(日)
法師温泉の一軒宿。「日本秘湯を守る会」会員の宿。
■立地
群馬県の最北エリアに位置する。
関越道・月夜野インターから国道17号に出て、三国峠へ向かう。
峠の手前で国道から離れ、そこから 5kmほど脇道を進むとたどり着く。
月夜野ICから約40分の行程である。
"脇道" は道幅こそ狭いが、決して悪路ではなく、秘湯の宿としてはアクセスに恵まれた方だろう。
ただ、この日は箱根で雪が降るような、寒の戻りの一日。翌朝の路面凍結が心配された。
大事を取って、上毛高原駅に車を残し、14:00発の上毛バスを利用することにした。
なんと、このバスは立ち客が出るほどの超満席(^-^;)
猿ヶ京温泉で町営バスに乗り換え、15時過ぎに宿に到着。
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■外観
バスを下りると、木造3階建の建物が目に入り、思わずテンションが上がる!
小道の右手に新館 "法隆殿"、左手に本館。法師川を挟んで別館が建つ。
本館の奥には、宿の象徴・混浴大浴場 "法師乃湯" がある。
本館入口には "日本秘湯を守る会" の提灯が下がる。
2階の軒には「御入浴客御定宿」と記された木板が掲げられ、いかにも風情がある。
法師温泉の開湯は1200年前、長寿館の創業は1875年(明治8)。
本館・別館・法師乃湯の3棟は、国の登録有形文化財に指定されており、
与謝野晶子や川端康成が泊まった客室が現存するなど、歴史ロマン豊かな宿でもある。
その外観は昼間でも十分に美しいが、日が落ちるとより幻想的な光景となる。
写真好きな方ならば、何枚もシャッターを切りたくなること請け合いである。
以下、新館利用 3名1室/1人あたり¥20,670(税サ込)のプランについてご紹介。
なお6ヶ月前から予約可能なので、できるだけ早めに予約を入れることが望ましい。
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■設備
ガラガラと扉を開け、靴を脱ぎ、本館ロビーへと足を踏み入れる。
大きな柱時計が時を刻み、畳の間には巨大な切株がオブジェとして横たわる。
見上げれば清められた神棚が、旅人たちの到着と出発を見守っている。
ロビー脇には囲炉裏の間があり、出発前にはお茶をいただくことができる。
少し中へ入ると売店があり、さまざまな土産物が並ぶ。
浴室へ向かう通路の途中には、ドリンク自販機と有料マッサージマシンが設置してある。
フロントに申し出れば、"湯たんぽ" を無料で貸し出してくれる。
携帯電話(ドコモLTE)は問題なく使用可能。
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■客室
全37室。今回は両親の希望で、新館 "法隆殿" を利用。
歴史の重みこそないが、新築木造なので快適性は二重丸!
新館利用の場合「部屋食」となるのも(好みによるが)嬉しいポイントだろう。
今回通された部屋は、贅沢にも "ちゃぶ台の間" "堀りごたつの間" の二間を備えていた。
食事と就寝はちゃぶ台の方、テレビを見ながら寛ぐなら堀りごたつの方で。
両親の宿選びは料理重視で、広い客室には興味を示さないタイプだが、
こたつに関しては大好きとあって、この間取りに大喜び(^o^)
新館だけあって、設備面も十分。
エアコン、ウォシュレット、ドライヤー、洗面台、冷蔵庫、金庫、さらに自炊用のIHヒーターまで備える。
冷蔵庫には予めドリンクが入っており、後払いの申告制。
(機械式ではないため、少量であれば持込み品も冷蔵可能)
不満は何もないが、ひとつ贅沢を言わせてもらうなら、
部屋の鍵が 2つあると、お風呂に行ったりするとき便利かな?
私たちの部屋は、ネパール人の若い男性仲居さんが担当。How International!
素敵な笑顔、日本語も流暢かつ丁寧。違和感のないサービスで頑張っていらっしゃる。
そういえばこの宿のお客さんには、ヨーロッパ系の方もちらほらいるようだ。
歴史ある佇まいに惹かれる感覚は、日本人・外国人を問わず共通のものかもしれない。
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■温泉
3つの浴室(法師乃湯、玉城乃湯、長寿乃湯)がある。
※日帰り入浴も可能だが、10時半~13時半と時間が短いので注意。
混雑が予想されるため、雰囲気を満喫するためには是非とも宿泊をお勧めしたい。
宿の象徴である "法師乃湯" は、何をおいても入りたい。
基本的に混浴であるが、夕食後 20~22時が女性専用に割り当てられているため、
女性はこの時間帯を狙うのが無難だろう。
ただし混浴時間帯に入浴する女性も、決して珍しくない。
逆に男性は、朝に玉城の湯・長寿の湯に入ることが出来ないため、
コンプリートを目指すのであれば、夜のうちにこれらに入っておきたいところだ。
泉質は、カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉。弱アルカリ性、濃度スコア1260(通常レベルの濃さ)。
法師乃湯は、加水・加温・循環・殺菌いずれも無しの「完全掛け流し」。
ほかの浴室は、加温・循環あり。
◎法師乃湯
1895年(明治28)に建築された、完全木造の大浴場。国の登録有形文化財。
1981年、国鉄の企画切符 "フルムーン" ポスター撮影に使われ、一躍注目を浴びたという。
詰めれば百人は入れるか、という広大な面積を誇る。
堂々たる梁と柱、仰ぎ見る高さの天井。湯気で静かに潤った空気。
装飾性のある蒲鉾型の窓からは、外光が白く差し込んでくる。
丸太で四角く仕切られた湯船は、ほのかに白く濁った湯をたたえる。
冬場の湯は、かなりぬるい(天然のまま加温していないため)。
それゆえ、長湯は確実だ。
浴槽の底には、丸石が敷き詰められている。
特筆すべきは、その石のすき間から、温泉がじわじわと湧き出していること!
浴槽の底から湧出するタイプの温泉は、全国的にも貴重な存在であり、秘湯ファン垂涎の的。
この宿を予約困難にする、大きな理由となっている。
窓の外には、音もなく3月の雪が降る。
明るく白い窓の向こうから、冷気がゆっくりと下りてくる。
誰も言葉を発さず、ただただ、湯に浸かる。
◎玉城乃湯
加温されている分、法師乃湯より少し温度が高め。一般的な適温である。
3つある浴場のうち、唯一露天風呂を備える。
内湯ではシャンプーなどが利用できる。
法師乃湯と比べて新しい分、特別な情緒には欠けるが、十分に立派な木造浴殿。
太い梁に、広々とした湯舟。普通の温泉宿ならば、メインの大浴場として通用する施設だ。
お客さんの多くが法師乃湯へ向かうため、ここはかえって穴場かもしれない。
実際、私も深夜・朝方と贅沢に "一人独泉" を楽しんだ。
◎長寿乃湯
最も小さい浴場だが、個人的には、足下からの温泉湧出を一番はっきり感じることができた。
109歳は "椿寿"、110歳は "皇寿" というように、おめでたい額が掛かる。
こちらもシャンプーなどを利用可。
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■夕食
新館利用の場合は部屋食となる。
時間は指定されており、私たちは 18:40スタートだった(部屋により時間差あり)。
◎生ビール(¥648)
銘柄はアサヒ「熟撰」。風呂上がりの一杯! ぷはー(^o^)U°
◎群馬・土田酒造「秋月」(300ml¥1296)
この宿のオリジナルラベル。
まろやかな味わい… 雪解け水のように、するすると喉に流れ込む。
◎群馬・永井酒造「水芭蕉」スパークリング日本酒
瓶詰め後にも発酵が進み、シュワシュワ炭酸が生み出される日本酒。
オリが沈殿しているが「栓をあけてから混ぜる」よう注意!
私は混ぜてから栓をあけてしまい、盛大に損をしてしまった(笑)
女性向けの味だが甘すぎないので、食中酒としてもいける。
◎お造り
上州サーモン(マス)、刺身こんにゃく、汲み上げ湯葉、ナマズの磯辺巻。
山の宿だけに、山の幸で揃えてくるところは流石。
淡水魚のナマズは、群馬県では結構よく食べるそうだ。
イメージとうらはらに、淡泊な白身でもっちり美味しい。
群馬・下仁田名物のこんにゃくは「山ふぐ」と呼ばれることもあるそう。
◎野菜・山菜
春菊のおひたしと、山うどの胡麻油。いずれも春を告げる野菜・山菜だ。
後者は塩ダレに胡麻油の風味が効かせてあり、酒を誘う味わい。
◎酢味噌あえ
うるい(山菜)のシャキシャキ感に、きくらげのコリコリ。
酸っぱすぎない上品な味わい。盛付けも美しい。
◎吸物
山菜たっぷり、さらに白魚入り。薄味で仕上げてあり、品の良さを感じさせる。
卓上コンロで温めるから、(調理場から離れた)部屋食でもアツアツをいただける。
このあたりは、寒い山中の宿ならではのおもてなしといえそうだ。
◎天ぷら
メインはなまずの天ぷら。癖もなく淡泊な白身で旨い。
五色そうめんを菊花のように揚げたものが添えられるが、これがカラフルで可愛い!
タラの芽が山里らしくて嬉しい。衣は少しクタッとしていたかな?
◎茶碗蒸し
甘鯛が入っており、ちょっとリッチな茶碗蒸し。
◎上州豚のバター焼
豚食が盛んな群馬県だけあって、メインは豚料理だ。
美しい桜色に焼きあがったところを、自家製のおろしポン酢でいただく。
バター風味の舞茸も美味しい。
◎野沢菜漬
(長野が近いためか)美味しい野沢菜だが、食べるのはちょっと待って!
あとで美味しいごはん(こしひかり)が出てくるから。
◎〔追加〕上州牛鉄板焼(¥3780)
追加料理があると知れば、反射的に注文してしまうのが父母の悪い癖(笑)
案の定、かなりのボリュームでお肉が登場! こんなに食べられるのかー(^-^;)
膨らみかけた梅のつぼみを添えることで、山里の春が表現されている演出が心憎い。
一人用卓上コンロを2台連結、そこで石板を熱して牛肉を焼く。
石焼なので余計な脂が落ち、美味しく焼けるような気がする。
甘辛い焼肉ダレで… 肉が柔らかくて美味しいのはもちろんのこと、玉ねぎが甘いのも印象に残った。
◎〔追加〕馬刺し(¥2268)
馬刺しといえば、会津・長野・熊本で食べられるイメージだが、群馬にも馬食文化があるらしい。
半解凍、ルイべのような状態で供されるため、ひんやりサクッと快い食感を楽しめる。
ニンニク醤油でいただけば、獣肉の臭みはなく、噛むほどに淡泊な馬の味わいが広がる。
一般的な馬刺しがもつ、生肉の食感とは全く別物であるが、
それがかえってクセを消し、食べやすい一品料理になっている印象。
特に馬肉好きでもない父が、このルイべ馬刺しを絶賛していた。
◎ごはん
魚沼産こしひかり!
前述の三国峠を越えれば、苗場・越後湯沢を経て魚沼にたどり着く。
ここは群馬県にして、中越の美味も堪能できる土地柄といえよう。
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2017/3/27(月)
目覚めると… 外は雪景色となっている。
木々の枝には風雪が凍りつき、ミニ樹氷のように白く輝いている。
ネパール人の仲居さんに尋ねたところ、3月の雪は驚くにはあたらず、
5月でも降ることがあるのだと。
■朝食
新館利用の場合、夕食と同じく部屋食となる。
時間は指定されており、私たちは 8:15スタートであった。
◎湯豆腐
珍しいのは、なんと「鮭の切り身」が入っていること!
ただ鮭が入っているだけでなく、その鮭に味がある。
鮭の特産地、新潟に近いからだろうか。
◎サラダ
生ハムが乗せられているのがユニークで、ちょっとした高級感がある。
豚肉をよく食べる群馬県らしい… かもしれない。
ベビーコーンや海藻など、中身豊富なのも嬉しい。
◎しじみ佃煮
生姜風味で甘辛く炊いてあり、まさにごはんの友である。
海から遠く離れた土地だけに、こういった一品は重宝されたんだろうな。
温泉卵のねっとりとした黄身を口にすると、温泉に来たんだなと改めて感じる。
味噌汁には、たっぷりとなめこが入る。
漬物も数種類の盛合せになっており、細かいところまで気を使った献立である。
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10:00発の町営バスで、今年最後の雪景色を眺めながら、里へと下りる。
風趣あふれる木造建築に加え、堂々とした面持ちの “法師の湯” は是非一度体験する価値がある。
客室設備・食事も十分に満足できる。
一般のホテルに飽きた方にこそ体験してほしい、大人のための温泉宿だ。
3位
1回
2017/12訪問 2018/01/06
激辛が苦手だからこそ、この店に好評価を付けたい。口は辛くないのに、汗が止まらない不思議体験!
[東京都港区]
2017/12/13(水)
JR新橋駅西口にある、四川料理店「ふっとうりょうふ」。
場所は… 新橋駅の烏森口を出て、ニュー新橋ビルを右手に見つつ、真っすぐ進む。
日比谷通りの手前、"新橋しのだ寿司" を越えてすぐ左手。
新橋駅から徒歩5分。都営三田線・内幸町駅(A1出口)から徒歩3分。年中無休。
店名の通り "唐辛子をふんだんに利用した激辛料理" がウリ。
中国語では、活気あふれる様子も "沸騰" と表現するようだから、活気のある港町という感じだろうか。
店舗の外装からして真っ赤で、すでに辛そう(^-^;)
驚くことに店内奥にエレベーターがあり、1~4階まで客席になっている。
4~6人掛けテーブル席を中心に、全130席と広い店内。
全席喫煙アリ。お客さんの喧噪がBGMみたいな感じ。
忘年会シーズンということもあり、広い店内はほぼ満席。大変な人気ぶりだ。
お客さんには中華系の方も多く、さぞ本場の味なのだろうと期待が持てる。
メニューの一部を紹介すると…
沸騰魚(魚の激辛旨煮)、重慶烤魚(フライドフィッシュの麻辣スープ煮)
辣子鶏(激辛唐揚げ)、回鍋肉、揚げ茄子山椒掛け
火鍋、干鍋、鍋巴(お焦げ)
春雨と肉とろみ炒め、キムチチャーハン
魚香茄子、宮保鶏丁、青椒肉絲、棒棒鶏、麻婆豆腐、乾焼蝦仁、紅油餃子
口水鶏、辣子鶏、夫妻肺片、毛血旺、蒜泥白肉(ニンニク茹で豚)
この店が得意とする、四川料理を中心に注文するのが良さそう。
スープなしの鍋料理(干鍋)は、いま現地で流行しているという。
羊や鴨の血・カエル・ウサギを使った料理など、日本では一般的でない食材もちらほら。
お客が多くて、注文を取る店員さんもてんやわんや。
料理が出るまでには少し時間が掛かるので、
何皿か一度に注文しておいた方が良いだろう。
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■白酒「赤星 二鍋頭」 アーコウトウ(¥450)
コウリャンや麦を原料として造る、アルコール度数56度のスピリッツ。
四川料理にはコレ! 飾り気もなくストンと、なぜかマッコリのグラスで出てくる(^-^)
飲み方は、ちびりちびりとストレートで。
ウォッカに似た味だと思い込んでいたが、意外と乳酸系のまろやかな甘酸っぱさがある。
だからアルコールの強さが、そこまで気にならない。
激辛料理をつつみ込むような、不思議な包容力をもつお酒。
これ一杯で十分酔えるので、安上がりという特典も(笑)
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■沸騰魚 フェイトーユィ(¥1880)
四川料理の基本調味「麻辣」を堪能できる看板料理。ステンレスの鍋で登場!
たっぷり入った唐辛子、真っ赤なスープの色に戦慄を覚える(^-^;)
よく見れば、黒いゴツゴツの花椒もスープの上面に、びっしりと浮かんでいる。
おそるおそる口に運んでみると、おや、意外と激辛ではない?
確かに「後味に」ピリッと刺激は来るが、辛すぎて食べられないものでは決してない。
普通にいけるぞ?
ほどよい塩気で、意外にも箸が進む。
スープのように見えるのは透明な油で、それに唐辛子や花椒の香り、
ニンニクの旨味が見事に溶け込んでいる。
花椒の痺れる辛さだけでなく、「苦味」がはっきりと感じられる。
結局、揚げた魚を熱した香味油に漬けた料理であり、四川風アヒージョと言えるかも?
魚の下に隠れたもやしにも、香味油がたっぷり絡んで旨い。
ときどき花椒が「ガリッ」と来るのも、これまた乙である。
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■水煮牛肉 シュイグオニュウロウ(¥1280)
"水煮" と聞くと、日本の感覚では辛さと無縁であるが、そこは四川料理である。
唐辛子と花椒(麻辣)がたっぷりと使われている。
先ほどの沸騰魚と似た調理法だが、唐辛子の種を取り出してある分、辛さがグレードアップ!
唐辛子の刺激もありつつ、塩味により全体バランスが取れているから、やっぱり箸が進む。
牛肉ともやしを食べ終わると、絶品の香味油があとに残る。
ピリピリするが、なんとなく箸が進む。
激辛には弱い私、辛い物を食べると口の中がヒリヒリヒーヒー、
味わうどころではなくなるのが常だが、この店の料理は何故だかそうならない。
口はまだまだ大丈夫なのに、やたらと汗が出てくる(^-^;)
身体の中から熱くなる、これは想像以上!
まさに驚きの薬膳効果を体感。
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■衣白肉(¥780)
物干しに洗濯物を掛けたような、面白いルックス。
茹でた薄切り豚バラ肉とスライスキュウリが、交互に盛り付けられている。
料理名の「白肉」も、おそらくそういう意味だろう。
例によって、唐辛子がたっぷり入ったつけダレが付いてくる。
これ、そんなに辛くない。むしろどっぷり付けるのが美味しい。
さらに言えば、先ほどの「水煮牛肉」をつけ汁にして食べるのがオススメ♪
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■酸菜炒粉(¥880)
箸休めに、辛くなさそうなメニューを注文。
「酸菜」とは、文字通り酸っぱい白菜、つまりは漬物である。
乳酸発酵の酸味がかなり強めで、これまた癖になる味わい。
春雨が極細なのも印象的。
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■西紅炒蛋(¥780)
トマト入り玉子炒め。中国家庭料理の代表料理。
砂糖が多めに使われており、予想外に甘酸っぱい味付け。
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■本格回鍋肉(¥1280)
ニンニクの芽が入っているのが最大の特徴。
回鍋肉にキャベツを使うのは、日本流のアレンジレシピだという。
唐辛子は使われているが、それほど辛くない。
むしろ、ニンニクの芽のシャキシャキ感と甘さが印象的。
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■桂花糯米藕(¥880)
レンコンの穴にもち米を詰め、はちみつを掛けたスイーツ。
レンコンもっちり、甘さ控えめで日本人の口にも合います!
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■杏仁ジュース
杏仁豆腐味の甘いジュースを想像したが、意外と甘くないし、くどくない。
ほどよくミルキーなので、激辛をカバーする効果がありそう。
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隣のテーブルは、中国人と日本人の混合グループ。
中国の方が「これが四川の本当の味なんです」と日本語でお話されていたが、
なるほど、故郷の味として誇りたくなるのも分かる気がした。
4人で飲んで食べて¥14,000。リーズナブル!
大皿料理が基本なだけに、大人数でいろいろ頼むのが楽しいお店。
激辛好きじゃなくても、いや、激辛好きでない方にこそお勧めしたい、
四川料理の名店だと思う。
4位
1回
2017/10訪問 2017/10/22
とんでもなく旨い鯖寿司! 最高級の昆布・強めの塩・酢のまろみで、鯖が作品になる。
[京都市]
2017/10/15(日)
祇園にある、京風寿司の専門店。
創業1868(明治元)年。Wikipediaに記事があるほどの有名店。
場所は… 八坂神社の向かい側。祇園交差点の北西角。
京都を代表する観光エリアにして、非常に分かりやすい立地である。
祇園バス停すぐ。京阪祇園四条駅から徒歩8分、四条河原町から徒歩11分。
間口は狭いが、奥に深い "ウナギの寝床" のような店内。
中で食べていくことも可能で、その場合は「ぐじのうしお汁」など、
店内限定メニューも味わえる。
持ち帰りの場合は入口付近で、それほど待つことなく受け取れる。
特に予約も不要というのは、気軽で嬉しい。
10月のお品書きは以下の通り。
〔姿寿司〕鯖姿寿司(小・大・極上)、ぐぢ寿司、はも寿司
〔押寿司〕箱寿司(並・上)、アジ寿司
〔巻寿司〕巻寿司、海藻巻、粟麩巻、小鯛笹巻
〔ちらし〕京ちらし、はもちらし、台所寿司
〔いなり〕いなり寿司
今回は迷いなく鯖姿寿司を注文したが、粟麩をメインの具とする「粟麩巻」、
あらめ・めかぶ・とさかのりなど 8種類もの海藻を巻き込んだ「海藻巻」、
ちりめんじゃこ・青菜を巻いたまかない仕様「台所寿司」などにも興味津々。
高級品から日常食まで揃っているところは、思った以上に懐が深い。
鯖寿司は常温で1日、涼しい気候であれば最大3日まで日持ちするそうだ。
味が落ちるため、冷蔵庫に入れるのは厳禁。
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■鯖姿寿司(小¥2268)
"祇園石段下" と記された、茶色のパッケージが風流。
それを開くと、八坂神社の楼門が描かれた包装紙、さらに竹の皮に包まれており、
中から鯖寿司が顔を出す瞬間は、なんだかときめいてしまう(^-^)
6切れに食べやすくカットされており、思った以上に "こじんまり" とした印象。
これで2000円超えというのは、いかにも高級である。
鯖寿司はほぼ円筒形で、片方の端に生姜が貼りつく。
この生姜は甘酢漬けのガリではなく、生の生姜であり、ピリピリ来る大辛口。
以前、和歌山で本なれ寿司を食べたときにも、こういう生姜が出てきたことを思い出した。
何となくイメージだが、決して甘えず、決して媚びない姿勢を感じさせる(^-^)
巻かれている昆布は "少々堅うございますので" 取り除いて食べるよう案内あり。
まず、この昆布が、主役の鯖を食ってしまいそうなほどに凄いのである。
ねっとりと糸を引いて、粘りがすごい!
納豆のような粘りが、口に入れるから既に旨味を予感させる。
ただそれだけでなく、長時間持ち歩いても鯖やシャリを乾燥させないという
機能性も持ち合わせているようだ。
そして、シャリの甘さ加減が絶妙、好みど真ん中!
適度にキリッと酢が利いていて、昆布の香りが鼻に抜ける。
追い打ちを掛けるように、銀色の背もまぶしい鯖の旨味が押し寄せる。
肉厚なのは言うに及ばず、圧倒的なのである、旨味が。
並の鯖寿司と一線を画すポイントが、確信的な「塩の強さ」。
このシンプルな味付けこそが、鯖の旨さを引き出しているようだ。
一方、砂糖の甘さはほとんど感じられず、塩味とバランスを取るのは酢のまろみ。
塩味は決して突出せず、酢のまろみ、脂の旨味と交じり合ったときの素晴らしい味わいといったら!
素晴らしいの一言。
噛めば噛むほど味が出て、昆布のとろみが溶け出して、食べ進むのが勿体ない(笑)
取り除くよう指示のある「昆布」は、旨味を染み込ませるための、あくまでも裏方の存在。
確かに食感の観点から、寿司と一緒に口に入れるのは得策ではないだろう。
「都こんぶ」よろしく、酒のつまみとして頬張ることをお勧めしたい。
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期待の何割か先に行く、特上の鯖寿司。
これまでに食べてきた鯖寿司のなかで、間違いなくトップに君臨する。
特別なことはやっていないはずなのに、なぜこうも味が違うのか。
とんでもなく美味しい鯖寿司。おそるべし京都!
5位
1回
2017/05訪問 2017/05/28
旬野菜のパレットを自在に操るフレンチは、まさに「多彩」。ぼやけていない味付けも好印象!
[東京都渋谷区]
2017/5/11(木)
恵比寿南にある、フレンチレストラン「あいだ」。
野菜のパフェなど、多彩な野菜を用いた料理が特徴的。
場所は… JR恵比寿駅の西口を出て、山手線沿いを南(目黒方面)へ。
急な上り坂を進むと信号があるので、これを右折してすぐ、ビルの1階。
駅から徒歩7~8分。月曜・第三火曜休業。
なお東口(ガーデンプレイス側)から出発すると、距離は長くなるものの、
急な坂道を上る必要はなくなる。
周囲は緑の多い、中層マンションが立ち並ぶ住宅街。
誕生日記念ということで、予約をして 2名で伺った。
今回はディナーだが、トータル¥5000弱でランチも楽しめる。
外観はモダンな感じで、サーモンピンク系のソフトな色使いが女性好みな感じ。
入口はガラス張りで、中の様子が見えるので安心して入店できる。
客席は 2~6人掛けテーブル×8卓程度(?)。
全席禁煙。BGMはジャズや洋楽だが、たまにアップテンポな曲もかかるのが面白い。
落ち着いたオレンジ色の照明に、白のテーブルクロス。
あまり畏まりすぎずに料理を楽しめる、いわゆる「スマートカジュアル」の雰囲気だと思う。
私たちは入口側の席だったため、厨房の様子は見えなかったが、
オープンキッチンの構造なので、場所によってはライブ感もあるだろう。
メニューは、おまかせ一品のみ。
メインディッシュは、魚料理1種・肉料理2種から選択可能。
また、途中の料理に「フォアグラを乗せるかどうか」の選択がある。
ソムリエがいらっしゃり、ボトルワインはお手頃な価格から品揃えされている。
そのほか、新鮮なフルーツジュースを多種揃えているのは、特筆すべき点といえる。
・果肉あらごと搾りブルーベリーのジュース
・洋梨果汁100%のスパークリングジュース
・メルロ種で造った赤ワインになる前の葡萄ジュース など
酒好きの私でさえ気になってしまうドリンクが多々ある。
ちなみに小物使いが可愛くて、いかにも女子ウケしそうである。
結婚指輪のようなスガハラガラス(sghr)製に、巻かれたナフキンが差してある。
これ、すぽんと抜くのが気持ちよい(´▽`)
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■野菜のオーケストラ・2017陽春(¥5310)
全7皿、40種類の野菜を用いたコース料理。
今が旬の「グリーンピース・トマト・そら豆・山ウド・いちご」をテーマに。
フレンチでありながら、和の食材や技法も織り交ぜる構成が特徴的。
◎シャンパーニュ「カルトドール・ブリュット」(グラス¥1544)
こんな日は、普段は飲まないシャンパンから始めてみよう!
香り良し! 甘さはほとんどなく、あくまでも辛口。
◎アミューズ/フォアグラのクレープ
切り株に乗った、可愛いクレープスタンドで登場。まるでソフトクリームのよう!
中にはフォアグラのムース、ラズベリーの酸味といちじくの甘み。
フォアグラとフルーツの相性を活かした一品。
これだけ10個でも食べられそう(^-^)
◎季節の野菜パフェ
この店のスペシャリテ。
トマト・きゅうり・さやいんげん・グリンピース・玉ねぎ・アルファルファ・
人参・ゴボウ・ほうれん草・じゃがいも・ベビーコーン、さらにはタンポポまで!
この一本で、何種類の野菜が摂れるのだろう?
クランベリーみたいなトマトは、小さいけれど味わいしっかり。
グリンピースのムースは、ほんのり甘くて風味豊か。
薄切りのゴボウは風味がある。
じゃがいものアイスクリームは、サフランで風味付けされている。
ほろ苦いたんぽぽ(ピザンティー)の苦味は、大人のアクセント。
グラスの底が近づいてくると、富士山サーモン(ニジマス)のスモークが現れる。
さらにグラスの底には、玉ねぎのコンフィが潜んでいる。
飴色のコンフィは甘酸っぱい味付けだから、白ワインにぴったり合う。
ワインビネガーで味付けしてあるのだろうか?
野菜それぞれの個性を活かしつつ、
コンソメのジュレやオレンジの果実で全体をまとめてあるから、味がぼやけていない。
◎フランス産ビール「クロネンブルグ・ブラン」(¥1062)
かすかに白濁しており、一般的なビールとは、全く異なるフルーティーさ。
以前、家で飲んだこともあるが、そのときの記憶より香りが鮮烈!
ワイングラスの効果だろうか?
◎自家製パン
全粒粉と思われるパンに、バターを添えて。小麦ふすまの粒々感が快い。
バターは、メノウのような石皿に乗ってくる。紫色のマーブル模様が美しい、本物なのかな?
ところで、パンは 1個だけの提供なのだろうか。お願いすれば 2個目が提供されたのか…
◎春スズキと柳タコの彩り、トマトのデクリネゾン
3種のトマトとシーフードがハーモニーを奏でる一皿。
デクリネゾン(Declinaison)は、もともと "語尾変化" という意味だそうだが、
近年では「一つの食材を複数の手法で食べる」という意味に派生したそう。
日本語であれば "七変化" とでも言えようか。
今回はトマトがそのまま、ピューレ、
ピューレについては、さくらんぼの中に一日置いて、果実の香りを染み込ませたものだという。
もはやトマトを超えた甘さ!
シーフード軍団は… 表面をさっと炙ったスズキに、ふんわり甘い帆立のムース。
真っ黒なイカスミのチュイルは、パリパリの食感が楽しい。
オリーブオイルでマリネされたタコは磯の香りを運び、やや強めの塩味に仕上げてある。
キュッと締まった身が、白ワインを進ませる。
ほわっと軽い雲のようなのは、グレープフルーツの甘いムース。
ビジュアル先行かと思いきや、味の方も実力派である。
◎そら豆と蟹のスフレに、香ばしいフォアグラのポワレを添えて(¥590増)
非常に香りの良い一品。
これがメインだと言われたら、納得してしまうだろう(^-^;)
ズワイガニの茶碗蒸しは、スフレのようにふわふわ。蟹の繊維感も楽しめる。
モロッコいんげんは天然の甘み。
フォアグラは焼きたてのアツアツ! 小さめの塊と大きめの塊でサーブされる。
前者はカリッとこんがり、後者はほわっと、全く異なる食感が楽しめる。
濃密な風味に、バルサミコの軽やかな酸味が嬉しい。
あっさりとこってり、一皿で二つの料理が楽しめて満足度が高い。
◎仔牛のベーコン巻き、マスタードとあさりの二色ソース(¥885増)
本日のメイン。美味しい香りで満たされた一皿。
新じゃが・行者ニンニク・こごみ・白舞茸・あさりのニョッキ・
ほたるいか・帆立のムースが脇を固める。
付合せのレベルを遥かに超えた、楽しいコンビネーションだ。
一番印象に残ったのは、行者ニンニク。
単なる葉っぱでしかないのに、はっとするほどニンニクの風味があり、肉料理との相性はぴったり。
白舞茸の立ち姿は美しく、ホタルイカならではの香り。
牛肉はベーコン巻になっているため、立ち上る燻香が食欲をそそる。
部位は「背中」だと説明があった。肉そのものの味は、まあ普通な印象。
マスタードソースはコクが深くてぐっと濃い味。これはワインが進むところだろう。
その濃い味を、アスパラの甘味が緩和する。
◎桜海老とホタルイカご飯、山うどのピクルス
メインのあとに「くずし」と称し、和風の一品を挟んでくる。
会席料理のごはんが最後に出てくるような感じで、これは楽しくて嬉しい仕掛け。
ストウブで出てくる様子は、まるでピラフのよう。
ぱっと見は少なめに見えるが、これでちょうど適量である。
山うどのピクルスは、あくまでマイルドな酸味。
普通は酢味噌で食べる山うどを、ピクルスで出してくるところが、フレンチらしいひとひねり。
◎苺のデザート ~和のエッセンス~
一枚のプレートに、いちご・よもぎどら焼き・桜あん・レンズ豆の塩煮が点々と盛り付けられる。
ハーブティーもしくはコーヒー付き。
まずはいちごの甘酸っぱさが効いており、春を感じる爽やかな印象。
桜風味のあんも、第一印象に拍車を掛ける。
さらに食べ進むと、よもぎのどら焼きの穏やかな甘み、レンズ豆の塩気、
柔らかな求肥の食感が渾然一体になり「塩豆大福」のような味わいに!
そこへいちごの甘酸っぱさ、チョコレートのほろ苦さと畳み掛けると、
いちご大福のような、ストロベリーチョコのような複雑な味わいへと誘われる。
フレンチならではの発見と驚きに満ちた、技ありのデザートプレートであった。
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◎お土産/ドライフルーツとナッツのフィナンシェ
店を出る際、お土産として渡される。
ここまでで十分すぎるほど満足しているが、さらにダメ押しという感じ(笑)
これは、ファンが付くのも納得である。
小さいけれどしっかりケース入りで、焼き菓子らしい風格がある。
袋を開けると、上品な香ばしさが広がる。
重厚なバターの風味に、クランベリーの甘酸っぱさとアーモンドの香りが加わる。
あくまで甘すぎず上品な仕上がりは、さすがフレンチレストランの焼き菓子。
これは自宅で飲むラム酒と、相性抜群だね(^-^)
このお菓子をコースの中で出したとしても、満腹が先に立ってあまり味わえないと思う。
お土産として渡すことで、前日の記憶が蘇る効果もあるわけで、これは上手い仕掛けだなと思った。
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一品一品の提供スピードはかなりゆっくり。
二人の会話をゆったり楽しむにはちょうど良いが、会話が続かないカップルやご夫婦には
あまりお勧めできない(笑)
料理が登場するたびに、ダンディな男性店員さんから説明がある。
席によっては店員さんから距離があり、ドリンクの追加注文などしにくいタイミングもあったが、
総じて客の方によく注意を向け、つかず離れずの上手い接客であると感じる。
都内でいただくフレンチとしては、抜群のコストパフォーマンス。
食べログでの高得点にも合点がいった。
6位
1回
2017/04訪問 2017/04/12
何が出てくるか分からないワクワク感、薄切りだからこそ味わえる贅沢感!
[東京都中央区]
2017/4/2(日)
銀座一丁目の高級焼肉/牛肉料理店。
場所は… 中央通りを北上し、みずほ銀行のある "銀座一丁目" 交差点を左折。
そしてすぐに右折すると、左手に現れる。
メトロ銀座駅(A13出口)から徒歩5分。銀座一丁目駅(6番出口)から徒歩1分。
今回は4名で訪れた。
漆黒の外観は、いかにも高級そうな空気を漂わせる。
あくまでも目立たないので、前を通り過ぎるだけでは気付かないかもしれない。
扉を開けると、格好良い男性店員さんに案内され 2階の個室へ。
客席のほとんどが個室になっており、プライベートな会食にはぴったりな感じ。
全席喫煙アリ。
大袈裟な換気設備はないが、肉をジャージャー焼きまくるタイプの店ではないため、
煙については、ほとんど気にならなかった。
この店では、肉を焼くのは店員さんの仕事である。
それだけでなく、ほぼ付きっきりでサービスしてくれる。
正式なソムリエ資格(超難関!)をお持ちの方なので、肉とワインのマッチングに関しても
安心してお任せできる。
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■肉割烹
¥12000のコースをもとに、主催者さんが独自カスタマイズをかけたもの。
いずれも国産黒毛和牛を使用。ワインは別途費用(金額不明)。
◎シャンパーニュ「ジョセフ・ペリエ」
最初は泡でスタート♪ 泡といってもビールではありません。
白ぶどうと黒ぶどうをブレンドした辛口シャンパン。
ラベルには、英国王室御用達を表す "キュヴェ・ロワイヤル" の文字。
ああ、今夜だけは、私もセレブリティの仲間入り(笑)
◎ナムル3種
・山くらげ
ジャキジャキの食感、胡麻油の風味があとを引く。
・アメーラトマト
静岡県産の高糖度トマト。さっぱり爽やか♪
・たけのこ
たけのこのナムルなんて、食べたことない!
あっさり塩味で上品。木の芽(山椒)が、和の趣を添える。
◎肉前菜3種
いずれも生肉だが、保健所から "認定生食用食肉取扱者" の許可を得ており、
厳しい衛生基準をクリアしているというから安心だ(メニュー等にも、法に定められた表示がある)
・炙りザブトンの握り 雲丹添え
山の幸と海の幸のコラボレーション、一目見ただけで心躍る一品。
綺麗にサシの入った肩肉はトロのよう。シャリとの相性も良好。
やや甘口の昆布醤油が、牛肉の甘さを引き立たせる。
・赤身タルタル キャビア乗せ
牛肉を刻み、オリーブオイル・塩胡椒で食べる欧風料理。韓国風に言えばユッケ。
霜降りを楽しむ前者(握り)と対照的に、こちらは赤身の旨味を噛み締める。
握りがウニなら、こっちはキャビアで対抗!
これは確かに、ビールじゃなくてワインだね~。
・亀の子タタキ
カメノコとはモモ肉の一部で、サシの入り方が亀甲に似ていることから命名されたという。
柔らかい赤身の噛み心地と旨味を、生姜ダレであっさりと味わう。
◎シャトーブリアンのカツレツ 自家製トリュフ塩
出た! "普通の焼肉屋とは違うのだよ" と言わんばかりの、存在感あふれる一品!
最近流行りの "牛カツ" 高級バージョン。
シャトーブリアン… テレビなどでも騒がれ、一躍有名になった部位。
高級なことは知っていたが、腰(ヒレ)の中央部分というのは今日初めて知った。
フランス人美食家の名を冠する。最も運動しない部位なので、柔らかいのだという。
私のシャトーブリアンも、運動してないから柔らかいんだろうな(笑)
食べてみると確かに柔らかい(^-^)
赤身ベースなので無駄な脂っこさはなく、カリッとハードな衣が旨味を増幅させる。
さらに… 添えられている「トリュフ塩」の香りに唸らされる。
この塩だけで、ワインがいくらでも飲めそうだ♪
ここだけの話、トリュフの香りが良いなと思ったのは、私の人生初めて(←秘密ですよ)
この会社は別に中華料理店を経営しており、そちらでトリュフを多用することから
その切れ端を利用して作るそうだ。
切れ端とは思えない香気。これだけ買って帰りたいほど。恐れ入りました…
◎スープ
牛タンのつみれ、シマチョウ、三ツ葉が入ったスープ。
あっさりとしたスープに、ホルモンのコクが際立つ。
使われているホルモンは少量だが、実に存在感がある。
なるほど、ホルモンをこうやって使ってくるのか…。
高級店ならではの "ひとひねり"。何が出てくるか分からない面白さがある。
◎白ワイン「ドメーヌ・ド・ピス」シャブリ
フランス・シャブリ地区で造られる、シャルドネを原料とするワイン。
ラベルには山の風景が描かれているが、横にすると女性の…
肉といえば赤ワインというのが定番だが、塩やレモンで味わう焼肉には、あえて白ワインを合わせる提案。
爽やかな酸味、ぶどう感があって美味しい♪
~焼肉はじまり~
この店の焼肉は(タン・ハラミを除き)火の通りやすい「薄切り」にこだわり、
旨味を逃さないよう、短時間で焼き上げるのがポイント。
焼くというより「火を通す」と表現するのがふさわしい。
繊細だから、客(特に私のような酔っ払い)に焼かせるわけにはいかない。
店員さんが秒単位で肉の様子をウォッチし、完璧な状態に仕上げ、
軽く折り畳んだ状態で(旨味が逃げないよう)タレの入った器にサーブされる。
◎極みの黒タン(タン元)
仙台名物の牛タンは、そのほとんどがオーストラリア/アメリカ産であり、黒毛和牛のタンというだけで貴重。
柔らかい根元部分を使用。厚切りなのに、サクッと快く噛み切れる。
レモンを掛けて爽やかに… 白ワインがぴたりと寄り添う。
◎クリ
前足の部分。その名の通り、栗に似た形になるからだという。
一般的な説明では "筋肉質な赤身" とされるが、サシの入り方がお見事です!
塩ダレの加減もちょうど良い。これも確かに白ワインに合うね。
◎上ミスジ 焼きしゃぶ
"肉の中央に一本線" が入っていれば、ミスジと見分けられるそうだ。
こちらはポン酢であっさりと…
上質な脂にポン酢の酸味がマッチ。口の中でまろやかにとろける。
◎シャトーブリアン
再び登場、ヒレ肉のスーパースター。
薄切りだからこそ、柔らかく脂がとろけるような、見事な火入れ具合を堪能できる。
極端な霜降りではなく "赤身なのにとても柔らかい" のが特徴といえる。
甘みを楽しむ肉だから、甘口のタレでいただくのも合点が行く。
◎赤ワイン・バローロ「ピオ チェーザレ」
ここで赤ワイン登場。店員さんはソムリエなので、適切なタイミングでワインを提案してくれる。
白ワインと肉のマッチングも、予想以上に良かったが、
やはり赤が出てくると、真打ち登場という感じで期待が高まる。
イタリア・ピエモンテのバローロ村というところで育ったワイン。
艶やかなルビーレッド! これは素晴らしく香りが良い。
奥深くタンニン(渋味)が効いて、酸味とのバランスが絶妙。
タレで味わう焼肉には、やっぱり赤が似合う…
◎ハラミ
薄切りにこだわる店であるが、ハラミに関しては厚切りが旨いのだという。
じっくりと時間を掛け、しかし焼きすぎて旨味を失わないよう配慮される。
肉が柔らかすぎる… 驚きである(驚きすぎて、痛恨の写真失念)
タレは思いのほか甘く、塩気はほとんど感じない。
これが高級牛肉の味を引き立てるポイントかもしれない。
◎ザブトンのすき焼き
脂の乗った肩肉。最近知名度が高まってきた部位といえるだろう。
甘辛い割下に、徳島県のブランド卵「阿波そだち」黄身を絡ませて…
1枚だけいただくすき焼きの、なんと美味しいことか
◎うしごろ流 TKG
先ほどの「阿波そだち」は、プチ卵かけごはんとしても味わえる趣向。
半分にわけたご飯の上に、おもむろに黄身を乗せて…
ねっとりと、白飯に幸せを絡めて…
◎シンシン
これも初めて聞く希少部位。モモの付け根部分だという。
この辺に来ると、もうどれでも美味しく感じられる(笑)
◎リブ芯
背中部分、リブロースの中央部分。
脂が乗っていることで有名、見た目にも白いのが分かる。
脂の旨味が、タレに乗って口の中でとろけ、ひろがる。
…これは旨い!
「霜降りは苦手というお客さんにも、これだけは食べてもらいたいから、出しちゃうんですよね」
店員さんの笑顔にも納得、焼肉のトリを飾ることにも納得。
◎テグタン麺
締めの炭水化物は、4人がそれぞれ違うメニューを注文。
バリエーション豊富で、どれも惹かれる。
私は冷麺好きなので "テグタン麺" をチョイス。
ひんやりしたスープが心地よい、強い歯応えの麺も私好み。
牛肉を使った "トロタク" も、生食許可のある店でなければ食べられない逸品。
ひとつ味見させてもらったが、霜降り牛肉とたくあんのマッチング、なかなかイイネ(^-^)
◎デザート
最後はデザートラッシュ!
アイスクリームあり、杏仁豆腐あり、マンゴープリンあり、スイートポテトあり…
もはや全部美味しい♪(酔っ払い完成)
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薄切りだからこそ、さまざまな希少部位の味比べが出来る。
薄切りだからこそ、上質な脂の旨味を逃すことなく、肉の美味しさを100%味わえる。
薄切りだからこそ、塩ダレ・ポン酢・割下・甘ダレがよく絡む。
味の変化があるから、赤ワインだけでなく、白やスパークリングとのマッチングも楽しめる。
食後は、もう何も入らないほどの満腹感である(^-^;)
高級価格帯ではあるが、それに見合う満足を得られる、間違いのない店である。
7位
1回
2017/12訪問 2018/01/02
松江では一押しの料理処。SNS映えする「鯛めし」、苦労して盛り付けるのもまた楽し♪
[島根県松江市]
2017/12/2(土)
松江しんじ湖温泉(東茶町)にある、料理旅館「皆美館」の食事処。
今回は宿泊せず、夕食のみお願いした。
場所は… 松江駅・県立美術館方面から宍道湖大橋を渡り、北詰の交差点を右折して町中へ。
古い商店街をしばらく歩き、右手にある。
JR松江駅から徒歩20分、一畑電車・松江しんじ湖温泉駅から徒歩12分。
予約のときから、近年まれに見る素晴らしい電話対応に驚かされた。
実際に到着すると、予想以上に立派な構えで、期待感は高まるばかり。
松江では、最高クラスの旅館と言っても良いのではないだろうか?
なお、玉造温泉にも系列の宿があるようだ(佳翠苑 皆美)。
ロビーの横を通り抜け、お食事処へ。
日本庭園を望むテーブル席に案内された。
予約時点で、職人の調理風景が見えるカウンター席を選ぶことも可能。
格式ある旅館にふさわしく、客層としては年配の方が多い。
この日は学会でもあったのか、休日の割にはスーツ姿が目立った。
夜のお品書きから、一部を紹介すると…
・鯛めし
・鰻のしゃくもどき(炊合せ) ・鰻まぶし
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■熱燗「國輝」(¥767)
松江の地酒。酒蔵はこの宿のごく近く、数軒隣に建っている。
仲居さんによれば、熱燗が一番おすすめとのこと。
なるほど、口の中で甘味が柔らかく広がる。
寒い冬に旨い熱燗、これは沁みるなぁ…(^-^)
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■熱燗「李白」(¥767)
こちらも松江の地酒。
辛口で、先ほどの酒とは大きな違いがあるが、2杯目としては丁度良い選択だった。
李白は、唐の時代の詩人。酒を愛し、酒を讃える詩をたくさん残したそうだ。
松江出身の首相・若槻礼次郎氏により、酒銘として付けられた。
漢詩の素養がある方だったのだろうな。
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■鯛めし御膳 やくも(¥4248)
◎先付
島根沖特産のもずくは、糸のような細さなのに、コリコリとした歯応えが抜群。
玉子焼には栗の粒が入り、秋の名残を感じさせる。
こんにゃくにはナッツ入りの味噌を合わせてあり、香ばしさが引き立つ。
いずれも手が込んでいる。
◎お造り
鯛・サーモン・イカの3種。どれも新鮮さが感じられる。
◎サーモンと海老の焼魚サラダ
カルパッチョ風の一品だが、"焼魚サラダ" というコンセプトが面白い。
イエロー&グリーン、2色のクルトンが彩りを添える。
サラダの下には、焼鮭と海老が隠れていて、何だか宝探しみたい(^-^)
◎カレイのせんべい揚げ
パリパリで美味しいカレイの唐揚げ。ポン酢でさっぱりと味わう。
二度揚げしてあるので、骨までバリバリ食べられる。
ワイルドに頭までガブリ… これは、カルシウムの宝庫!
◎鯛めし
いよいよ主役の登場!
ごはん、鯛のアラで取った出汁、そこに乗せる具が別皿で現れる。
具は、鯛そぼろ、茹でた白身と黄身、大根おろし、海苔、刻みねぎ、わさびの七点。
ごはんはお櫃に、たっぷり三膳分!
茶碗には、嫁が島(宍道湖に浮かぶ松の島)が描かれており風情満点。
その茶碗を温めてあるのも、さすがの心遣い。
食べロガーとしては、綺麗に盛り付けなければいけないとプレッシャーが働く(笑)
でも意外と、自分で盛り付けるのも楽しい!
仲居さんからも「綺麗に盛れましたね~」とお誉めの言葉(^-^)
決して慇懃無礼でなく、丁寧な中にも気さくな接客が素晴らしい。
綺麗に盛り付けた鯛めしの上に、好きなだけ出汁を注ぐ。
はじめに出汁そのものの味をみてみると、品が良くて奥深い甘さが感じられる。
これは美味しい!
特に、出汁の塩加減が絶妙といえる。
鯛のアラを煮出したスープはあくまで上品だが、それなりの塩気と甘みがあり、
「淡泊すぎない」美味しさがある。
全体的にはあっさりしているのに、ぐっとコクがあって、あとを引くのである。
松江も京文化の流れを引いているのか、西日本独特の奥深さを感じさせる味わいだ。
添えられたべったら大根も味わい深い。
香の物まできっちりと手抜き無しなのは、名店の必須条件である。
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2人で飲んで食べて¥10811。クレジットカード利用OK。
店の高級感・食事の内容とも期待以上で、この値段は非常にリーズナブル!
食後、タクシーに乗り込むところまで、お辞儀でのお見送りで恐縮してしまう(^-^;)
接客面でも最後まで言うこと無し。
今回の山陰旅行、食に関してはこちらがナンバーワン♪
ちなみに、銀座と日本橋にも店舗があるようなので、今度機会があれば訪ねてみたい。
松江で食事をするなら、大いにお勧めできる一軒だ。
8位
1回
2017/10訪問 2017/10/23
[京都市]
2017/10/14(土)
北野白梅町にある、粟餅(あわもち)専門店。
創業1682年。
場所は… 北野天満宮を出て、大通り(今出川通)を渡って右折。
しばらく歩いて左手にある。
嵐電・北野白梅町駅から徒歩6分。
徳川綱吉の時代(約400年前)から、同じ場所で営業し続ける文字通りの「老舗」。
このような店舗を訪れることは、古都観光ならではの大きな魅力である。
暖簾をくぐれば「おいでやす~」、親切な声に迎え入れられる。
入口で注文を伝え、札をもらって席で待つ仕組み。
持ち帰りも可能であるが、素朴な風情を残す店内で、是非とも食べていきたい。
商品は、基本的に粟餅のみ。ほかに持ち帰り用の栗赤飯がある。
「白梅」こしあん3個、きなこ2個
「紅梅」こしあん2個、きなこ1個
個数だけの違いであるが、天神様のお膝元とあって、梅に掛けた表現にしているのが何とも風流。
ちなみに営業は17時までであるが、売り切れることもあるので早めの来店が吉。
実際この日も、16:40の時点で餅が品切れになり、お客さんを断っていた(^-^;)
客席は、2人掛けテーブル×2卓、4人掛け×3卓、6人掛け×1卓。
全席禁煙、BGM無し。
壁には、店舗の由来などが掲げられている。
湯吞みの形が独特で可愛い♪
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■紅梅(3個¥450)
こしあん×2、きなこ×1のセット。
◎こしあん
艶やかな赤紫色が美しい。
甘さで誤魔化しておらず、小豆の風味が生きている。
伊勢の赤福を思わせる味。
安い和菓子のあんこは甘すぎて、餡だけで食べたいとはあまり思わないが、
こちらのあんこは、餡だけ単体で食べても十二分に美味しい。
もしかしたら、砂糖が貴重な時代には、もう少し甘く作っていたかもしれない。
推測だが、ただ昔と同じものを作っているだけでなく、時代に合わせる姿勢も
持ち合わせているのだと思う。
◎きなこ
上品な甘みの具合、風味ともに素晴らしい(^-^)
中の粟餅はほんのり褐色で、粘りが強く、
ところどころに穀物の粒感が残っているのがポイント。
いかにも手作り、という温かい味がする。
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食べ終わってお会計、「おおきに~」。
お母さん方の、朗らかな接客も好印象だ。
これは絶品、名物と言うにふさわしい。
3個しかないのが残念に思えるほど美味。
とりあえず歴史のある店舗ということで訪れたが、期待を大幅に上回る満足度。
やはり、昔から現代まで生き残っているものは、実力が違う。
9位
3回
2020/03訪問 2020/07/18
店主は華麗なベネンシアドール、たまにはモルトやカクテルから離れ、シェリーバーとして使うのも面白い。
[東京都港区][来訪回数:13回]
2020/3/21(土)
赤坂見附にあるショットバー。
店舗情報は、1回目の「行った」をご参照あれ。
店主の小栗さんといえば、その華麗な経歴でメディアにも引っ張りだこの存在だが、
それ以上に努力家さんで「可愛いだけのバーテンダーじゃなくて、本物の技術を見せてやる」的な
気概に満ち溢れているところが、本当の魅力だと感じる。
2018年には「最優秀ベネンシアドール」を受賞。
ベネンシアドールというのは、スペイン原産のシェリー酒を、長い柄のついたひしゃく(=ベネンシア)で
高所から一気にグラスへと注ぎ入れる技術を持った人のこと。
その美しい所作は一種のパフォーマンスであると同時に、酒に空気を触れさせて
香りを開くエアレーションの効果も持ち合わせる。
一般的なワインとは異なる、シェリーならではの魅力を伝える伝道師的存在ともいえる。
そんなベネンシアドールがいる店なのだから、
たまにはウイスキーやテキーラを忘れて、シェリーに溺れてみましょうか♪
シェリーは、スペイン南部だけで造られる特別なワイン。
通常のワインにアルコールを添加し(酒精強化)、木樽で最低3年寝かせて仕上げる。
使われるぶどうには 3種類あり、甘い品種か酸っぱい品種か、その違いが一つのポイント。
次に、酵母膜(フロール)の下で熟成するか、膜の上で酸素に触れながら熟成するかが、二つ目のポイント。
これらの違いにより、シェリーは 8種類に分類される。
〔辛口〕 フィノ、マンサニーリャ(マンサニージャ)、アモンティリャード
〔中口〕 オロロソ、パロ・コルタド
〔やや甘口〕ペールクリーム、ミディアム
〔甘口〕 クリーム
〔極甘口〕 モスカテル、ペドロヒメネス
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■マンサニーリャ「デリシオサ」
スペインの南端近くにあるサンルーカルで醸造される、辛口のシェリー。
酵母膜の「下」で熟成するのがポイント。
大西洋に面するため、潮(塩味)のニュアンスが感じられるという。
このあたり、アイラモルトと同じような考え方で親しみやすい。
またマンサニージャ(マンサニーリャ)とは "カモミール" という意味で、
ほんのりと、林檎に似たニュアンスの香りも感じられるという。
甘みはほとんど感じず、辛口であっさりした味わい。
「シェリーは甘すぎる」イメージをお持ちの方には、まず飲んでみてほしい銘柄。
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■マンサニーリャ・パサダ「ルスタウ」
マンサニーリャより熟成期間が長く、酵母膜の裂け目からわずかに酸化熟成を行う。
美しい小麦色を呈し、良い意味で複雑味を増す。
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■アモンティリャード「XECO」
はじめに酵母膜の下で熟成し、それから膜の上部で酸化熟成、二段階熟成を経ている。
香りは十分甘いのに、味わいは酸味が効いており、キリっとした一品。
ゴルゴダの丘を思わせる個性的なラベルも印象に残る。
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■オロロソ「ゴンザレス・ビアス・アルフォンソ」
ここまでのシェリーと同じパロミノ種のぶどうを用いるが、酵母膜の「上」で酸化熟成を経るのが相違点。
フィノに比べると甘みを感じるが、まだ辛口の部類。
甘みをまとった分、香りに厚み(複雑味)が増すのを実感できる。
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■パロ・コルタド「グレートデューク」
オロロソに似ているが、何らかの理由で酵母膜が生成されず、結果として酸化熟成となったシェリー。
最低でも 1年熟成しているので、樽熟成を感じる甘い香りが花開くが、
もとは辛口シェリーの製法なので、味わいはさっぱりしているのが特徴。
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■ペールクリーム「クロフト」
辛口シェリーに、あとからモスカテル種の濃縮果汁を加え、甘みとコクをプラスしたもの。
4年の熟成を経たと聞くと、なおさら有難みが増す。
このあたりから甘口に感じられてくるが、後味に、チーズを思わせる複雑な香りを残す。
とにかく香りが凄い! チーズはもちろん、フォアグラとも合うというから、納得である。
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■ミディアム「ミカエラ」
ミディアムと名が付くシェリーは幅広く、一通りでくくれないバリエーションの豊富さが魅力。
甘さはだいぶあるが、口の中でさっと切れて、くどさを残さないのが評価ポイント。
妖艶な赤い花をあしらった、アールヌーボーを思わせるラベルも印象的。
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■(番外編)ベルナッチャ・ディ・オリスターノ
シェリーはいずれもスペイン産だが、こちらはイタリア・サルデーニャ産の「シェリーみたいなワイン」。
樽熟成の際、あえて空間を残すことで、液体を酸素に触れさせて酸化熟成を促進させる。
これによりシェリーと同じ酵母膜(フロール)が生成され、長期熟成とあいまって、独特な風味が醸される。
穏やかで柔らかく、奥の深い印象。
分類的には白ワインながら、濃いオレンジの色合いも美しく、一度は試す価値のあるワイン。
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このお店がきっかけとなり、新しいジャンルのお酒に興味を持つことができた。
人とのつながりが人生の幅を広げる、まあ大袈裟にいえば、そういうことなのかもしれない。
[東京都港区][来訪回数:4回]
2017/7/4(火)更新
赤坂見附にある、オーセンティックバー。
店舗情報は、1回目の「行った」をご参照あれ。
相変わらず、とびきり明るくて可愛らしい店主。
カクテル作りを見ていると、独自の工夫が各所に感じられる。
先日は "季節のモヒート" をつくるのに、ローズマリーを軽く炙って添えていた。
炙ることで香りが立つのだろう… 思わず、同じものをお願いしたくなる。
5月の International Bar Show "なでしこカップ" には、選手として再び参加するという。
昨年は2位でちょっと残念。今年こそは1位に輝いてほしいと期待している。
店主は北海道出身のため、北海道風のおつまみには人一倍こだわりがある。
せっかくなのでメニューを載せると…
〔乾きもの〕北海道産鮭とば、ミックスナッツ、ドライフルーツ
〔小料理〕 じゃがバターアラモード、半熟煮卵といくら、雲丹といくらのクロスティーニ
北海道産お刺身生ハム、氷下魚の一夜干しスモーク、帆立の松前焼き
銀ムツの煮付け、ワイン漬けジンギスカン、帯広風豚バラ巻きおにぎり
〔パスタ〕 アイヌ葱とホタテの和風、ズワイ蟹とじゃがいものジェノベーゼ、レモンチーズクリーム
〔チーズ〕 大地のほっぺ、味噌漬けチーズ、チーズの盛り合わせ
このほか、裏メニューでスープカレーもやってます(^-^)
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■パローマ、お通し(チャージ¥756)
テキーラを、グレープフルーツジュースとトニックでアップした爽快カクテル。
初回訪問時にこれをお願いしたところ、想像以上に美味だったので今宵も発注。
ベースは "サウザブルー" というプレミアムテキーラ(原料:竜舌蘭100%)。
生のグレープフルーツを使っているので、とても風味が良い。
ダイヤモンドカットの角氷も美しい。
「特別なことはしてませんよ~」と店主は仰るが、何故だかほかの店で飲むより、美味しく感じる。
店主が美人だからか? いや、そんなことは決して無いはずだ(笑)
お通しは、少量だが 2品提供される。
今宵はアーリオソース(ガーリック風味)で和えられた菜の花と、いちじく入りクリームチーズ。
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■キウイの炭酸フローズンカクテル
熊本からやってきた新兵器「炭酸氷」を使用。
これはすごい! 驚くほどの炭酸感!
特殊な氷の中に閉じこめられた炭酸ガスが、その威力をいかんなく発揮する。
シュワシュワに加えて、キウイのフルーティな酸味が加わる。
昔好きだった "パチパチ綿菓子" を連想させる味。
これはすごいなー。
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■カンチャンチャラ
カウンターにジャムのような瓶が置かれていたので、店長に尋ねてみたら
"都内のビル屋上で取れた蜂蜜" だという。
それで、蜂蜜を使ったカクテルをお願いしてみた。
ホワイトラム(ハバナクラブ)をベースに、小さくカットしたレモンと蜂蜜を入れて
モヒートのようにザクザクつぶす。
トリニダードトバゴの名物カクテルだという。
グラスを近づけると見事な香り、蜂蜜が香り立つ!
レモンの酸味も効いていて、さっぱりと美味しい。
ビタミンCで元気になれそう、これは "大人のはちみつレモン" だな(^-^)
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■ブラッディバットマン
ブラッディマリー(トマト+ウォッカ)のベースをラムに変えたもの。
ラムとしてバカルディを使うが、コウモリ柄のロゴから連想した命名。
出来上がりに七味唐辛子を振って、
さらにはコクを加えるため… なんと「ジンギスカンのタレ」を投入!
なかなかの冒険だが、ブラッディマリーにクラマト(蛤エキス入りトマトジュース)を
使ったりするのを考えれば、あながちおかしくはなさそう。
実際に飲んでみると、旨味が詰まっており、後味がほんのりジンギスカン(笑)
北海道でメジャーな「ベル 成吉思汗のタレ」を使用。
醤油・酢・てんさい糖をベースに、ニンニク・玉ねぎ・生姜・みりん・蜂蜜など、
タレの原材料を見るだけでも、旨味が詰まっているのが分かる。
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■北海道産鮭とば(¥540)
最近 仕入れ先を変え、硬いのから柔らかいのに切り替えたという。
新商品は、その名も "鮭とばイチロー" (^-^)
ハーフレア。身に透明感があり、口当たりが優しい。
つまみが硬すぎると、お酒よりつまみに意識を奪われてしまうから、
酒を引き立てる相棒役としては、確かにこの方が良いだろう。
スモーキーな風味は、ウイスキーにぴったりである。
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■氷下魚の一夜干しスモーク(¥850)
「こまい」。居酒屋でたまに目にする名前だが、バーで出しているのはここくらいでは(^-^)
ししゃもくらいの大きさで、身が締まっていて味がある。
ウイスキーとはミスマッチと思いきや、スモーク香があるので、これが意外と合うのである。
アイラモルト、ラフロイグのソーダ割りと合わせてみては。
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■帯広風豚バラ巻きおにぎり(2個¥1080)
宮崎の肉巻きおにぎりっぽいけれど、これはあくまでも帯広風(^-^)
豚丼用の甘辛いタレがたまらない♪
この味付けと豚バラのこってり感が、ウイスキーにぴったり合う。
散らされた刻みネギもグッドアシスト(豚丼はグリンピースだけど)。
昨年訪れた、帯広駅前の豚丼「ぱんちょう」を思い出すな~
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■北海道風パスタ・大地のほっぺレモンチーズクリーム(¥1080)
平打ちパスタに、十勝産のカマンベールチーズ "大地のほっぺ" を使用。
少し時間が掛かるので、客側の配慮としては、店主に余裕があるときに注文したい(^-^)
チーズがかなり濃厚で、やや強めの味付けだが、酒に合わせるつまみとして考えれば妥当と思う。
レモンの酸味が爽やか、ピンクペッパーの香りが効いている。
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このほか、モルトウイスキーのトゥワイスアップを 2杯いただいたが、
改めて、ウイスキーの美味しさを実感できたような気がする。
あくまでオーセンティックな店舗でありつつ、ふらっと気軽にドアを開けられる「ギャップ」が魅力の店。
今度は、なでしこカップの優勝カクテル「マザーズブロッサム」を頂いてみたい。
[東京都港区]
2017/2/1(水)
赤坂見附(赤坂3丁目)にあるオーセンティックバー。
場所は… メトロ赤坂見附駅を西口に出て、繁華街を南下。
どら焼き「雪華堂」を見つけたら、その角を右折して小道に入る。
路上に置かれた紅いサインが目印。同ビルの3階。
赤坂見附駅から徒歩2分。赤坂駅(1番出口)から徒歩5分。
客席はカウンター6席、4人掛けテーブル×2卓程度。
全席喫煙アリ。シガー(葉巻)の用意あり。
大半のバーでは、BGMとしてジャズが流れているものだが、こちらはクラシック。
しかも大型スピーカーが設置され、音質にはこだわりがありそう。
バックバーにはヴァイオリンが飾られる。
そう書くと重厚なバーを連想するが、カウンターに立つのは若き女性マスター。
この方がすっごく明るくて、いつも笑顔を絶やさない、天真爛漫な感じ。
可愛いだけでなく、2016年女性バーテンダーカクテルコンテストで 2位(惜しい!)に入賞するなど、
オーセンティックバーに立つにふさわしい実力がある。
店主はテキーラ・マエストロであり、シガーマスターでもある。
数年前に別のバーから独立し、自らの店を立ち上げた。
近いうちにワインのソムリエ資格(難関!)も取りたいという勉強家だ。
バックバーを眺めると、ウイスキー・ブランデー・テキーラ・ラムと全方位的な品揃え。
ワインセラーも設置されており、好みのテイストを伝えれば適切なボトルを選んでもらえるだろう。
カクテルを頼み、バーテンダーならではの腕前を確かめてみるのも良さそうだ。
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■パローマ、お通し
アガベ100%テキーラをグレープフルーツ・ライムジュースで割り、炭酸でアップしたロングカクテル。
単純なレシピなのだが、これが素晴らしい香りで驚かされる。
くいっと飲み干してしまい、自分でもびっくり(笑)
今日のお通しは、燻製にした柿の種と、芽キャベツのアーリオオーリオ。
スモーク香が深くて、ちびちびと口に運ぶ動きがとまらない…
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■スコッチウイスキー「オクトモア」セカンドエディション
イギリス・アイラ島のシングルモルトウイスキー。
真っ黒でスタイリッシュなボトル。初めて見たら、ウイスキーの瓶とは思わないだろう。
アルコール度数60°、ピート(泥炭)をたっぷり焚き込んで、
正露丸を思わせる、特徴的な香りをまとわせている。
その香りは極めて個性的で、好みが合わなければ、およそ飲み物とは思えないほど…
私はこういうのが大好きである(^-^)
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■ベリーズ産ラム「fair」
3杯目には、中米ベリーズ産の熟成ラムを選んでみた。
ベリーズというのは、メキシコの南側にある海沿いの国。
マスター評によれば「バナナのような香りがします」とのこと。
各国におけるラムの味わいは、旧宗主国(植民地を支配していた国)の影響を強く受けるという。
ベリーズはイギリスから独立した国であり、そのラムはスコッチウイスキーの製法を受け継いだ関係で
一般論としては「どっしり力強い」ということになっている。
こちらのラムは、長い樽熟成を経て濃い琥珀色に色づいている。
香りは甘くて濃厚。熟成ラムの魅力を改めて体感できる一杯。
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■じゃがバターアラモード(¥756)
店主は北海道のご出身。
だから、フードは北海道食材推しなんです。
プリンじゃないのに、アラモード。
ホクホクじゃがいもの上に、刻みベーコンと粒マスタードを乗せて旨味UP。
この芋が本当に甘いんです!
甘さつながりで、ラムとの相性も抜群であった。
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■スコッチウイスキー「シン・ゴジラ」ラベル
日本の酒屋さんが企画したヴァテッドモルトウイスキー。
話題性のあるラベル。私のホームタウン=蒲田に上陸したゴジラは退治せねばなるまい。
最後の残り1杯、飲みきり分を提供いただいた。
ピーティーだけど、怪物のような荒々しさというよりは、フルーティーさを強く感じる一杯。
ゴジラ、食べてみたら実は美味しいかも… 放射線を発してる設定ですが(^-^;)
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■ワイン漬けジンギスカン(¥972)+赤のグラスワイン
じゃがバターが美味しかったので、次なる北海道フードを求める。
この店の人気メニューだというが、実際 私を含めて 3人のお客さんが注文していた(^-^)
薄切り羊肉とパプリカなどの野菜が、コクのあるソースに漬け込まれて登場。
濃いめの味が、お酒を進ませる。
特に、ワインで下味を付けてあるそうだから、ワインとの相性は間違いなし!
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■水餃子入りスープカレー(¥1080)+ラフロイグのソーダ割り
まだまだ食べますよー(いよいよ酔ってきた)
札幌生まれのスープカレーを、バーで食べられるとは面白い!
カレーは甘口で、やさしい店主の性格が出ているようだ(^-^)
さまざまな野菜に加え、水餃子が入っているのがユニーク。
カレーに餃子といえば、「みよしの」を連想させるな… と思いつつパクパク。
合わせるのは、アイラモルトのハイボール。
ソーダ割りにすると、正露丸のかおりがますます華やかに立ち上り、
心から楽しい気分になってくるから不思議だ。
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今夜はこれで満腹になったが、北海道素材を使ったパスタも
バーメシとしてはお手頃で、次回ぜひ食べてみたいと思った。
バックバーにはヴァイオリンが飾られ、店名には「シンフォニア」と付いている…
そのあたりの理由は、マスターに直接尋ねてみてほしい。
店主の笑顔と美味しいお酒、北海道フードのコンビネーション。
今まで知らなかったのが悔やまれる、再訪必至の一軒である。
10位
1回
2017/04訪問 2017/05/14
旬を感じる8品のコースを、無理せず通える価格帯で実現。半合から楽しめる日本酒の品揃えも魅力!
[東京都港区]
2017/4/25(火)
新橋5丁目にある割烹「よしの」。
場所は… JR新橋駅(烏森口)を出て、ニュー新橋ビル沿いを真っ直ぐ進み、ケンタッキーの角で左折。
そのまま進んで環二通りを渡り、その左奥。
駅から徒歩7~8分。
コース料理は月替わりで1種類のみ。単品料理はなく、完全予約制。
かなりの人気店で、月曜は満席と聞いたので、予定を変更して火曜に訪問。
ビル街の谷間に、スポットライトで照らされた「美の」の看板。
決して目立たない佇まい。ある意味、隠れ家的な雰囲気もある。
中に入り名前を告げると、"はなれ" へと案内された。
はなれは、徒歩1分のビル2Fに設けられている。
カウンター7席、4人掛けテーブル×2卓程度。全席禁煙。
店内は満席。カウンター席に一人客はいなかった。
サラリーマンのグループに加え、女性3人組の姿もあった。
男性料理人が一人、主に配膳を担当する女性が一人。
もちろん、本店の方から料理を運んでくるわけではない。その場で調理しており、アツアツを頂ける。
日本酒の品揃えから、一部を紹介すると…
陸奥八仙、墨廼江、上喜元、栄光富士、写楽、鶴齢、神亀、御湖鶴、大信州
醴泉、爾今、作、農口、黒龍、神開、春鹿、黒牛、獺祭、酔鯨、横山五十、鍋島
いずれも半合(90ml)で注文できるので、私のようにいろいろ試したい人には嬉しいシステム。
ただ、日本酒リストには「銘柄と価格がぎっしり書き並べられている」ので、
ある程度 お酒の知識がある人には良いが、ビギナーだと戸惑ってしまうだろう(^-^;)
メインは日本酒であるが、焼酎や梅酒の品揃えも意外と豊富。
日本酒好きでなくても、満足できるのではないだろうか?
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■日本酒
いずれも東北地方のように、もっきりスタイル(受け皿に溢れさせる)での提供。
◎群馬・龍神酒造「尾瀬の雪どけ」純米大吟醸・隠し酒(半合¥540)
大吟醸らしい華やかな香りの酒。
あっさりしすぎず、確かに日本酒の味がして美味しい。
◎岐阜・津島屋「四十一才の春」純米大吟醸・無濾過生原酒(半合¥648)
面白いネーミングに惹かれて注文。
現在41歳の杜氏さんが繰り出す、年に一度の限定出荷品らしい。
来年は "四十二才の春" になるんだろうな(^-^)
大吟醸らしく軽やかな味わいなので、日本酒らしい風味が苦手な方にもお勧めしたい。
◎茨城・須藤本家「山桜桃」純米大吟醸
純米大吟醸なので さらっとしているかと思いきや、生酒なのでどっしり濃い風味。
山桜桃と書いて「ゆすら」と読むのは、今日まで知らなかった…
◎長野・大澤酒造「明鏡止水 ラヴィアンローズ」純米(半合¥540)
通常の日本酒より 2%度数を抑えた、女性をターゲットにした純米酒。
エッフェル塔を描いたラベルがお洒落♪
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■2017年4月のコース(¥4104)
まず、東京の割烹でこの料金設定というのに驚かされる。
8品からなる構成。
◎手作り豆腐の葛あんかけ
見た目はおとなしいが、この一品目が凄い。
とにかく、出汁の風味が濃いのである。
豆腐の食感は、ムースみたいに口の中で溶ける。にがりを使わない製法らしい。
少量ではあるが、抜群の存在感。これすごい。
◎そら豆のゼリー寄せ
まったりとした食感。後味にそら豆が香る。
添えられたスナップえんどうの甘さも印象的。
◎お造り
シマアジ、真鯛、ミズダコの3種。
2切れずつ供され、岩塩とわさび醤油が用意されるので、6通りの味が楽しめる。
シマアジは張りのある身で旨味豊か。真鯛はもっちりあっさり。
ミズダコは吸盤のパリパリ感が楽しい。
サラサラの岩塩は、刺身の旨さを引き立てる。
蛇足だが、もっきりの受け皿が醤油皿に似ているので、
私は醤油を入れるところを間違えてしまった(笑)
酔っ払いの皆さん、要注意ですよ。
◎鰆の焼き物
焼きたてのホクホク。
割烹料理としては、塩を強めに効かせてある印象。
塩と日本酒はぴったり合うので、酒呑み仕様の焼魚といえそうだ。
◎あさりとうるいのお椀
大振りなアサリは春らしく、存在感がある。
あっさりとした塩味で、アサリの旨味を引き出している。
そこへうるいのシャキシャキ感、ほろ苦さが大人の味わいを添える。
◎海老しんじょ
割烹らしく上品な一皿。表面はカリッと快い歯触り。
中はほんわり柔らかく、豆腐の淡泊な旨味が楽しめる。
注目したいのは、添えられた塩。
ほのかな紅色で香り高いので、海老の殻を炒って砕き、塩と混ぜてあるものと想像する。
この塩だけで、酒が進みそうだ(´▽`)
◎ほたるいかと道明寺の蒸し物
椀の中に、桜餅(道明寺)が潜む。
塩漬けにした桜の葉、餅米、その中は少量の挽肉だったか?
葛でとろみを付けてあり、塩味の桜餅というのも乙なものだ。
他には菜の花・たけのこ・ほたるいかが同席する。いずれも今の季節を感じさせる素材。
ほたるいかと日本酒、これは間違いのない組合せ。
口の中で、濃厚な香りが広がる。
◎雑穀米とひじきの炊き込みご飯、味噌汁
釜焚きのご飯。梅ひじきと言うのだろうか、天然で上品な甘酸っぱさも感じられる。
最後に酸味の一品を持ってくると、満腹であっても食後感が爽やかになる印象。
雑穀はプチプチ食感を主張してきて楽しい。
油揚げがプカプカ浮かぶ味噌汁も、じわりと身体に染み入る美味しさ。
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お酒を含めても¥6000ちょっとに収まる割烹。
居酒屋の "ちょっと大人バージョン" として使い勝手が良く、人気があるのも頷ける。
惜しむらくは、"はなれ" に関しては普段着の厨房が丸見えで、
内装などの上質感には欠ける部分があること。
これは "気軽に使える飾らない雰囲気" と言い換えることもできるのだが。
最初のうちは、一品一品が少なめで、これは満腹にならない系かな? と思ったが
シメのごはんを食べる頃には、もう何も入らない気分になるから不思議(笑)
提供ペースはゆっくりなので、会話を楽しみながら
その意味でも、一人より二人、グループで来たい店と言えるかな。
[石川県金沢市]
2017/2/24(土)
主計町茶屋街にある割烹「しき」。
場所は、金沢市の中心部を流れる浅野川沿い。
浅野川大橋の南詰・主計町茶屋街(かずえまち-ちゃやがい)の一軒。
JR金沢駅から右回り周遊バスなどで7分、橋場町バス停下車すぐ。
国道から脇道に逸れて "あかり坂" を下ると、
川沿いの小道に沿って木造旅館や、粋な設えの料理屋さんが並ぶ、金沢ならではの情緒豊かなロケーション。
特に夕暮れ、各店に灯りがともり始める頃の風情は格別なものがある。
こちらはランチ営業がお休み中で、夜は懐石料理をコースで提供(予約必須)。
18時に予約を入れ、一人で伺った。
割烹というと構えてしまいがちだが、こちらはカウンター(6席)もあるので一人でも馴染みやすい。
2階席は、浅野川と桜並木を望めるロケーションが人気。
全席禁煙。BGMはジャズ。
黒を基調に、ところどころシルバーをあしらった、モダン&シックな空間。
カウンターはダウンライトで照らされ、まだ見ぬ料理への期待感を高める。
割烹というより、オーセンティックバーを思わせる雰囲気。
目の前には鉄釜があり、料理人が柄杓で湯をすくい出すたびに、もうと湯気があがる。
店主の年頃は私と同じくらいだろうか、30代と思われる若き料理人。
それをお弟子さん1名と、女性店員さん(店主の奥様?)が支える。
火を使う調理は左奥の厨房で行われ、カウンターでは包丁仕事や、最後の仕上げが行われるようだ。
この日、カウンターの客は私を含めて2組のみ。
もう1組は常連さんのようで、店主とフレンドリーに会話しつつ、酒と料理を楽しんでおられた。
いいな、大人になったらこんな行きつけの一軒も持ちたいものだ(´▽`)
コースは¥7800、¥9800、¥11800の3種類から選択(いずれも外税)。
今回は中間、¥9800のコースをお願いした。
アレルギーや苦手な食材があれば、予約時に伝えれば外してもらえる。
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■数馬酒造「竹葉」純米酒(¥1080)
能登町の地酒。石川県産の酒米を使用した地産地消の酒(五百万石95%、山田錦5%)。
竹葉のごとく、ほど良くシャープでキレが良い。
日本酒提供の際、こちらから求めなくても和らぎ水(チェイサー)を出してくださる点は好印象。
最近、日本酒の店ではこのポイントを重視している私である(^-^)
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■宗玄酒造「宗玄」生原酒(¥1080)
奥能登の地酒。火入れをしない生酒なので、広がる香りが段違い!
甘い麹の香り。度数が高めなのも忘れ、次々と口に含んでしまう。
ダイヤモンドのような輝きを放つ酒器も、また素敵。
改めて日本酒の魅力を感じさせてくれる。
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■懐石コース(¥10584)
およそ2品ずつ、こちらの食べるスピード感に合わせて提供してくれる。
◎新玉葱の天ぷらにウニ
早速フォトジェニックで、思わず頬がゆるんでしまう(^-^)
春が旬の新玉葱と、冬が旬のウニを同時に口に含む。
一品目から、今まで体験したことのない食材の組合せ。
衣はほろりと軽やか、それをサクリと通り抜けて、新玉葱の甘さが滲み出す。
そこへウニの複雑な味わいが交差、全く異なる二つの甘みが徐々にひとつになり、消えてゆく。
今起きたのは何だったのか? たった一口ゆえ、後から確かめる術がない味覚の一期一会。
これが割烹か。面白い!
◎ホワイトアスパラのお浸しに、加能ガニとウズラのポーチドエッグ
穂紫蘇の紫、カニの紅、アスパラの淡いクリーム色。
ウズラ卵を割れば、そこにオレンジ色の彩りが加わる。
九谷焼のパレットに展開される、食べるアート。
ホワイトアスパラは洋の素材だが、そのお浸しはぐっと和に寄り添う。
加能ガニは、加賀・能登沖で獲られるズワイガニのブランド名。
口に入れた直後はあっさり、追ってウズラ黄身のまったり感、
それから徐々に、出汁の風味とカニの旨味が染み出してくる。
◎真鯛の白味噌仕立て
椀は輪島塗。蓋の表側には菊、裏側には加賀藩の象徴・梅があしらわれる。
淡泊な味わいの真鯛を、白味噌のほのかな甘さと柚子の香りが引き立てる。
冬が旬のかぶらは、噛めばぎゅっと甘みがあふれ出す。
ほろ苦いタラの芽は、春の香りを野山から運んでくる。
◎白子豆腐
冬の味覚に一手間加えた、贅沢な椀物。
白子豆腐は餅のような食感で、しかも甘い!
思わず、甘い甘いと連呼してしまう。
汁は非常に薄味だが、出汁の香りがすごい!
季節先取り、はしりの筍は、鹿児島から取り寄せたもの。
フルーティーな黄色人参と、鶯菜と呼ばれる華奢な青菜が彩りを添える。
◎ヤナギザワラにいぶりがっこ
"魚へんに春" 春を告げる魚、サワラ。
金沢では "ヤナギザワラ" と呼ばれることが多いようだ。
炭火で香ばしく炙ったサワラは、身の内側がほろっと柔らかく、とろけるような口当たり!
九条ねぎ、柚子おろしを添えて。
驚くべきは、「塩味を足す目的で」いぶりがっこを使っている点。
スモーキーな香りが加わる上、カリカリした食感も楽しい。
緻密な計算なのか、遊び心なのか。いぶりがっこの存在で、他では味わえないユニークな一品に仕上がっている。
◎梅貝に、生アオサのわさび醤油漬
旬の終盤、なごりのバイ貝は、真っ白な素肌のように艶めかしい。
わさび醤油で和えられた生アオサは、コリコリ感が魅力的!
わさびの鮮烈な香りがありつつ、ツンツン来ることはないので食べやすい。
さらに白胡麻の香りも重なる。
どの器にも、香りと香りの足し算、掛け算が潜んでいるのがすごい。
◎のとてまりの天ぷらに生ハム、レンコンと椎茸の軸のチップス
肉厚の椎茸は地元産で、"のとてまり" と呼ばれるブランドもの。
直径10cm以上になる特大種で、松茸より高値が付くこともあるとか!
これだけでも十分な贅沢なのに、さらにイタリア産の生ハムを乗せちゃう。
先ほどのいぶりがっこと同じく "塩味を足すために付けました" とは店主の弁。
肉厚椎茸の旨味×生ハムの旨味、天ぷらの油がコクを増幅させる。
レンコンのチップスに加え、椎茸(のとてまり)の軸もチップスとして添えられ、
全く異なる食感を提供する。これがポリポリとして、なかなか美味しい。
香りのパートは、山椒とすだちが担当する。
これは完成度の高い料理!
◎甘海老の手まり寿司
焼海苔の上に、寿司飯と甘海老のむき身が "手まり" のように乗る。
自分で手巻き寿司にしていただくと…
甘い! 甘い! 先ほどの白子豆腐に続き、連呼してしまう。
これは "海の砂糖" だろうか? すごい甘さ。ぷりぷりでとろとろ。
タレには、旨味の詰まった海老味噌を使っているという。
◎ハマグリと牡蠣の吸物
冬の牡蠣と、春のハマグリが一椀に同居。
まさに季節の移り変わりを体現した一品だ。
今年初めていただくハマグリは、ぷりぷりと充実した食感で嬉しくなる。
大根の花と菜の花は、ふたり揃って春の訪れを告げる。
あられが食感のワンポイント。
◎能登牛、ふきのとう味噌
霜降りのコクと、赤身肉の旨味が同時に味わえる部位。
牛肉の脂をふきのとうの苦味がカバーし、さっぱりといただける一品。
ふきのとうの葉っぱ部分は天ぷらとして添えられ、旬の味を二通りで感じられる。
脇を固めるのは、筍、ひろっこ(アサツキ)、松の実。
少量だからこそ、あとを引く味わい。
◎うるいの酢の物
春の山菜。浅めの酢でさっぱりと。
◎葉ごぼうと鮭の幽庵焼きごはん
ここまでは "特上の味を少量ずつ" という趣だったが、最後に来て逆転ホームラン!
男子には特に嬉しい、大ボリュームのご馳走が待っていた。
釜ごと登場したごはん。結論から言うと、これが美味しすぎてびっくり!
今宵の一等賞(^-^)
ごはんの上にドンと乗っているのは、鮭の幽庵焼き。
幽庵焼きというのは、柚子・醤油・みりんのタレで漬け焼きにする和食の技法。
でっかいフィレだが、茶碗によそうときは身をほぐして提供される。
初めていただく食材、葉ごぼう。大阪八尾から運ばれたものらしい。
この菜っぱと鮭の相性が抜群で、たまらない美味しさ!
細かく刻まれたごぼう部分(根っこ)も含まれており、これまた香り高い。
米は、やや硬めの炊き具合が絶妙!
柚子皮が香り、いかにも割烹でいただく、非日常のごはんという印象もある。
おなかの具合に合わせて、茶碗によそって下さる。
「どのくらい召し上がりますか?」「たくさんお願いします!」
「女性ですと、1杯しか食べられない方もいらっしゃいますが、持ち帰りも出来るんですよ」
私は釜がすっからかんになるまで、ガッツリ3杯いただいた(笑)
割烹の食事では満腹にならない? この店なら、そんなことないですよ!
おなかも大満足~♪
◎香の物
釜飯に添えられた漬物まで、しっかりと心遣いが行き届いている。
加賀野菜がもつ、五色の彩りを活かしたチョイス。
◎驚きの味噌汁
見た目には、油揚げとねぎが入った、普通の味噌汁。
ここへ来て普通の味噌汁か? …そうは問屋が卸さない(笑)
口に入れた途端「蟹を呑んだのか」と勘違いする。
ものすごいカニの風味! しかも汁物なので、直接舌に届く。
実際のところ、本物のカニ以上に強い印象で迫ってくる。
あまりにも驚いて、店主にお話を伺うと、
「相当な量の甲殻類を焼いて、出汁を取っています」
洋食でいえば、ビスクのような技法だろうか。
焼いているから、焼き蟹のような香ばしさが、そのまま汁に溶け込んでいる。
これだけで白飯が食べられるような、魔法のような味噌汁!
◎お抹茶とデザート
目の前で抹茶を点てて下さる。このパフォーマンスも風流でイイネ~
抹茶カスタード、金柑、ビターチョコレート。
"かんぺい" と呼ばれる、くるみ入りの蒸し羊羹。
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人生初のひとり割烹であったが、
最後の最後まで、大満足のうちに終了。
この界隈、非常に風情がありますねとお話したら、
「ひがし茶屋街とは違う雰囲気を守るため、物販の店を入れない決まりにしているんです」と
教えてくださった。
冬のもの、春のものを巧みに交えた素晴らしいお料理は、"季を嗜む" という店名に
まさに恥じないものだった。
また必ず再訪したい。