僕がここまで食というものに対峙するようになったのは、
記憶を取り戻そうとしているしているから。
この美食/素晴らしき時間への《うっとり》を深く突き詰めていくと、いつだって思い当たる場所がある。
この大切な大切な感情である《うっとり》はこの世界を生き抜くキーワード的な感情だと思っている。
すべてを官能的に変えるために、目の前の物と自分自身とを。
ここはいつだって、胎内的空間。
呼び起こされる前の子宮内呼吸。
この美しい一皿達を、来るべき自らの誕生に向けて僕は食べる。
失われた記憶を取り戻すために。
新たな記憶を作り出していくために。
食した瞬間に衝撃を受けるような一皿には、決まって口に入れた瞬間に鳴り響く鐘がある。
香りのついた鐘がある。
僕は生まれ落ちた/生まれただけの横浜の匂いを思い出さんとするかのように、無くした記憶を必死で探している。
「プルースト効果(現象)」ではないが、匂いが記憶を呼び覚ます現象を待っている。
そしてその行為は惚れ惚れする程に官能的だ。
僕がまだ出会っていない一皿はどんなだろうか。
それを考えただけでも、まだまだ広い世界に放られてもいい。


























