至福のビストロメニューを : Amandier

以前、数回お邪魔したこちら。

通常は、コースメニューですが、

月数回、ビストロの日があります。

かねてより、興味津々だったので、

この日、楽しみに伺いました。

柏木シェフの実直そのものな技は、

ビストロメニューでも冴えわたっていました。


いつもと勝手が違うのですが、

ビストロ風に、黒板に書かれたメニューが

運ばれてきます。

そこには、17種類のラインアップが。

もちろん、全部いただきたいので、

チョイスに苦戦しました。

以下、すべて2名でシェアを。

１，蝦夷鹿もも肉のタルタル
　　ブラッティーナをのせて
　　3980円
　　
　　艶々なタルタルは、ブラッティーナと
　　いいマリアージュ。

２，牡蠣のムニエル　焦がしバター
　　3680円

３，黒毛和牛テール赤ワインソース
　　3680円
　　以前、コースで登場したときに、
　　感動したのを覚えています。
　　球形に整えられ、ナイフをいれると
　　ハラリとほどけ、これまで
　　形を保っていたのが不思議なほどの
　　しなやかなテクスチュア。
　　赤ワインソースも、こっくｒした
　　コクと品があります。
　　究極です。

４，特大コラーゲンコロッケ
　　3280円
　　3品いただき、あとは、〆の
　　リゾットだったのですが、
　　まだ余裕があり、
　　これを追加。
　　本当に、特大で、中には、
　　コラーゲンたっぷりの
　　プリプリの具材が。

５，すっぽんと味噌漬けいくらの
　　リゾット
　　5680円
　　ゴージャスなリゾットです。
　　炊き込みご飯としてはありますが、
　　リゾットの仕上げがとても
　　いいです。

６，デザートワゴン
　　2380円
　　パティシエによるプレゼンテーション。
　　やはり、ワゴンはわくわくします。
　　4品をいただきました。

７，ハーブティ
　　1500円


お供は、
・シャンパーニュ　　グラス
　4000円
　DELAMOTTE 2014

・赤ワイン　グラス
　3000円
　Morey Saint Denis 1st Cru 2015
Le Monts Luisants


やはり、柏木シェフの手にかかると、

ビストロ料理も精緻で、真摯な姿勢が

垣間見えます。

極上のテールは、やはり極上だったと

再確認しました。


　　

クラシックフレンチが大好きです。

こちらの柏木シェフのクラシックフレンチは、

しっかりしたキャリアと、

真面目なお人柄から創り出されていることが

一目でわかるほど、丁寧な仕事ぶりです。

ちなみに、柏木シェフは、

「ミシェル　ブラス　トーヤ　ジャポン」を

皮切りに、フランスはヴィシーのレストランで修行。

帰国後は、札幌のフレンチを経て、

浅草「オマージュ」へ。

そして、「broc 長谷川稔　Lab」を経て、

現職というキャリアです。


今回、1年ぶりに再訪させていただきましたが、

進化著しく、さらには、サプライズが

随所に盛り込まれ、

期待を超えるパフォーマンスでした。

これだけ食べていても、まだ

初めての素材というものに出会い、

それが楽しくて食べ続けるわけでも

ありますが、

今回も、登場しました。


そして、前回と異なったのは、

外国人のお客様が増えていたこと。

それも頷けるのは、クラシックフレンチで

ありながら、日本文化や日本料理の

素材を組み込み、

「これは、日本でしか味わえないフレンチ」

と言わせる設計に仕上げているのです。

いや、そういうフレンチは、もういくらでもありますが、

という方も多いと思いますが、

その組み込み方、コースの構成が

考えつくされ、唸りました。


この日は、

Menu Confiance 35200円

フロマージュ　　　3000円

をいただきました。

以下、内容です。

１，アミューズ

　　なんと、夏越の払いの演出で
　　登場。
　　この季節、日本料理ではありがちですが、
　　フレンチでは、初めて拝見しました。
　　その柔軟さに驚きます。

　　4品のアミューズです。
　　・バフン雲丹、じゅんさい、うすい豆
　　・金目鯛のタルタル
　　・フォアグラのテリーヌ
　　・マンガリッツア豚のパテの春巻き

　　ディテールまで手が込んでいます。

２，特産松阪牛
　　サーロインをコリアンダーとマリネ
　　茗荷の泡で。

　　茗荷の泡がすっきりしていて、
　　サーロインの重たさは皆無です。

３，白甘鯛
　　炭火焼にし、
　　鰹出汁と紅芯大根のソースで。

　　紅芯大根の淡い紅色に、
　　白甘鯛が浮かび、
　　雅でさえあります。

４，蝦夷鹿
　　カツレツです。
　　このカツレツがふわっふわといえる
　　ほど柔らかく、滋味豊か。
　　胡椒を効かせたポテトソース
　　生ハムバターでソテーした
　　キャベツ。
　　ガルニの技も素晴らしい。

５，ジントニック
　　なんと、試験管に入って登場。
　　酢橘のエキスと皮を
　　ノンアルコールジントニックと
　　合わせて。
　　お口直しですが、グラニテではない、
　　斬新さ。

６，お茶漬け
　　メニューに「お茶漬け」と
　　書かれていたので、
　　「お茶漬け」を想像しましたが、
　　小気味よく裏切ってくれました。
　　なんと、お茶が玉露です。
　　しかも、鱧の出汁のコンソメゼリーに、
　　ワイルドライス、玉露パウダー、
　　そして、中トロ。

７，ふぐ白子
　　すっぽんリゾットに、
　　白子と大葉。
　　帆立貝の出汁で。
　　
　　こういうのは、日本人として、
　　ホっとするお味です。

８，青柚子
　　冷製カッペリーニ
　　ロイロム

　　ロイロムは、白鱒の卵。
　　オレンジ色のキャビア大の卵で、
　　卵なのに、あっさりしています。
　　日本ではまだほとんど知られていない
　　とのこと。

　　青柚子の清涼感あふれる一品。

９，和牛テール
　　ソース　ヴァンルージュ

　　出ました、柏木シェフの真骨頂。
　　私が食べてきた中でも、群をぬいて
　　真面目に作られているテール煮込み
　　でした。
　　骨にきちっとまとまったお肉は、
　　フォークで簡単にはらはらと剝がれます。
　　これが、最も難しいポイント。
　　骨への密集度が完璧なうえ、
　　剥がれ方も完璧。
　　どっしりしたヴァンルージュのソースに
　　感涙。
　　もちろん、パンで拭って最後まで
　　いただきました。
　　ちなみに、テールは川岸牧場のもの。

　　ここまで、「和」を感じさせる、あっさりした
　　構成できて、ここで、一挙に、THE　クラシックに。

10、ちまき
　　これはメニューにないサプライスです。
　　数種類の葉物の籠の中に、
　　笹ちまきが。
　　中には、サフランで炊いた洋風ご飯と
　　舞茸が。

　　別皿には、ガリののったスプーンが。

11、フロマージュ
　　　ここで、オプションですが、
　　　フロマージュを。
　　　ワゴンサービスです。
　　　今や、ほぼ見かけなくなった
　　　ワゴンサービスはやはりうれしい限り。
　　　7種類のフロマージュから以下を
　　　いただきました。
　　　・コンテ　24か月
　　　・ブリアサヴァラン
　　　・カマンベール
　　　・フルムダンベール

　　　　無花果、アプリコットのジャム
　　　　アカシアのはちみつ
　　　　胡椒

　　　こちらのフロマージュが美味しいと
　　　来店前から聞いていて、実は楽しみに
　　　してきました。
　　　店内で、熟成などを独自に進め、
　　　完璧な状態で供されます。

12、デセール
　　河内晩柑
　　バジルのソルベ
　　八女白折茶のソース

13、時の雫
　　マンゴー
　　マンゴームース
　　マルコポーロ
　　グランマルニエ
　　タピオカ

　　ここにも、空中でバルーンを作る
　　演出があり、最後まで楽しませて
　　くれます。

14、ミニャルディーズ
　　　こちらも、ワゴンサービスです。
　　　グランメゾンならでは。
　　　全13種類の小菓子。
　　　・カヌレ
　　　・バスクチーズケーキ
　　　・シュークリーム
　　　・小夏ゼリーとチーズムース
　　　・フレッシュメロンのゼリー
　　　・モンブラン
　　　・マカロン　（おにぎりの演出）
　　　・クッキー
　　　・アーモンドチョコ
　　　・フィナンシェ
　　　・3種の琥珀糖
　　　　（桜、金木犀、エルダーフラワー）

15、ハーブティー


お供は、
シャンパーニュ
Princes de VENOGE


何度も書いていますが、

どのレストランも、オリジナリティというものが

大切で、ここに来る理由というものが必要です。

そういう意味では、ここまで、想像を超越した

オリジナリティを創り、

サプライズや満足度につなげる不断の努力を

感じました。

振り返ってみて、とにかく楽しい宵でした。

大躍進中の長谷川稔グループが

また新たなフレンチをオープンさせました。

恵比寿と白金の間の路地にある古民家をリノベし、

ちょっと隠れ家風。

またもや、初回予約枠が2分で埋まった、という

もはや伝説更新中です。

店名「Amandier」は、アーモンド。

スペインや南仏では、春先に、染井吉野よりさらに

淡い色の可憐な花を咲かせるアーモンドの木が

たくさん見受けられます。

多くの実をつけることから、多産、多幸の象徴とされ、

皆さんに多くの幸が訪れるように、と語るのは、

今回シェフを任された柏木暢介シェフ。

長谷川稔シェフから「broc」を託され、

今回、さらに飛躍し、

よりラグジュアリーで、繊細、フェミニンに。


中村勘三郎さんが、

よく、「型破り」と「形無し」という

お話をされていました。

型を会得した人がやるのが、「型破り」。

そうでない人がやったら、ただの「形無し」。

料理もまったくそうで、

ベースを極めた人が、それにオリジナリティを付加し、

遊び心を加えると、それは、想像を超える

世界に。

柏木シェフの今回のお料理も、自由な発想に満ち、

サプライズ満載でした。


店内は、1階がキッチン、2階が、客席。

アーモンドの花をイメージしたという

エレガントな空間です。


コースは、Menu Confiance 33000円（税込）。

ワインペアリングは、20000円です。

「信頼」と名付けられたコースは、

贅をつくした素材に、柏木シェフの手間暇惜しまない

技が詰まっています。

が、実に、さらりと提供され、

その流れも品よくまとまり、好感が持てます。

メニューには、素材名がのっていますが、

そこからは、想像できない驚きが。

ほほ～～、こうきたか、と思わず、

感心させられます。

ワインペアリングは、ソムリエでもあり、

支配人　吉田雄太さんのセレクト。

これが、まさにゴージャスなラインアップです。


それでは、内容です。

＊は、ワインペアリング

１，アミューズ
　　スイカ、じゅんさい、白エビ、すき焼き

　　プレートには、4品が。
　　・牡蠣の殻に、
　　　スイカ、ボッタルガ、オイスターリーフ
　　　牡蠣ではないのに、牡蠣らしさを再構築
　　　するという高度な技です。
　　・じゅんさい
　　　鱒の卵と
　　・白海老のタルタルを　　
　　　サブレで挟んで
　　・すき焼き
　　　長谷川稔シェフの技を
　　　牛タルタルで。

　　＊シャンパーニュ
　　　Jacquesson Cuvee n' 744


２，オマール・ブルー　赤ワイン

　　オマール・ブルーをなんと、
　　赤ワインで。
　　いつもと違うオマールの表情に出会います。
　　行者ニンニクのサラダ
　　アボカド

　　＊白ワイン
　　　Corton-Charlemagne
Ravaut Pierre 2016

３，ガスパチョ
　　根野菜、実野菜、葉野菜

　　これもただのガスパチョではありません。
　　トマトの要素は、ジュレに。
　　ビーツのクランブル
　　ローストしたピーナツのオイルを。
　　ロゼワインとあいまって、南仏の風が
　　吹きます。

　　＊ロゼワイン
　　　Chateau Cavalier
Grand Cavalier Cotes de Provence 2017

４，黒鮑
　　もものすけカブ
　　花穂紫蘇
　
　　なんと、今度は、飯蒸しです。
　　もものすけカブはすり流しで。
　　山葵を効かせて。
　　黒鮑のテクスチュアは完璧です。

　　＊日本酒
　　　Nichi Nichi
日日　山田錦
　　　日日醸造

　　　津軽びいどろで。

５，仔牛　カツレツ
　　コンテチーズ

　　ブルターニュ産仔牛の背肉をカツレツに。
　　コンテのソース
　　サラダには、25年もののバルサミコ酢を。

　　優しい、品のある仔牛の仕上げ。

　　＊赤ワイン
　　　Chatear Lynch Moussas Pauillac 2000

６，ライムの結晶
　　ライムの実と砂糖
　　ヨーグルト、カルダモン

　　ちょっと甘めのお口直し

７，グリーンアスパラガス
　　キャヴィア
　　アールグレイ
　　
　　これは実にエレガントな一品でした。
　　曲線を描く、繊細にカットされたグリーンアスパラガス。
　　そこに、スコットランド産のサーモンのタルタル。
　　アールグレイはパウダーにして。
　　ほうずきと。

　　直線イメージのアスパラガスが、
　　しなやかに生まれ変わっています。

＊白ワイン
　　　Chateau de Tracy
Pouilly Fume 2020

８，ブイヤベース
　　くろむつ　チョリソー
　　
　　くろむつは炭火焼に。
　　黒豚のチョリソーをくわえ、
　　ブイヤベースには、八丁味噌を忍ばせて。

　　出汁は、貝の殻にいれて、目の前で
　　サーブしてくれます。

＊白ワイン
　　 Soalheiro Alvarinho 2020

９，パスタ
　　ウニ、山椒、すだち

鯛のジュレに花椒を効かせ、
　　余市産の雲丹を。

　　＊白ワイン
　　　Sauvage Riesling
Georg Breuer 2020

10、仔鳩
　　　ホタルイカ、ラルド・ディ・コロンナータ
　　　
　　　ふっくらと焼きあがったラカン産の仔鳩を
　　　まず丸ごと見せてくれます。
　　　クレームソース
　　　出汁のソース
　　　アーリーレッドをクネルにして。

　　　小鳩そのものの肉質もいいですが、
　　　素晴らしい火入れです。
　　　ここで、初めてパンが登場。

11、ビーフストロガノフ
　　これはメニューにはない、オプションです。
　　お腹の具合を聞かれますが、もちろん
　　いただきます。
　　量も調整していただけます。

　　なにもいえない、〆にはこれ、
　　という旨味凝縮。

＊赤ワイン
　　　Anais Saint Joseph 2000


12, メロン
　　天使音メロン
　　クレソン

　　さて、ここからは、かわいいパティシエール登場です。
　　天使音メロンとともに、
　　生姜とレモンのシロップ
　　生姜のクランブル
　　桂花陳酒のゼリー
　　メロンのグラニテ

　　そして、クレソンのソルベ

　　最後に、大きなボールいっぱいの
　　桂花陳酒の泡を、目の前でかけてくれます。

　　この素材のマリアージュが実に素晴らしい。
　　
　　＊日本酒
　　　みむろ杉　Dio Abita
三輪山の酒

13、時の雫マンゴー　ココナッツ　杏仁

　　長谷川稔グループが所有するマンゴー農園の
　　マンゴーをピュレに。
　　杏仁豆腐とココナッツソルベを。
　　モヒートをシロップに。
　　酸味を加えていない完璧なマンゴーの
　　デセールです。

　　＊貴腐ワイン
　　　Chateau Doisy Daene 1995

14、お茶菓子
　　・グレープフルーツのアイスを
　　　ホワイトチョコでコーティング
　　・ピスタチオの胡麻豆腐仕立て
　　　フランボワーズと
　　・カヌレ
　　・さくらんぼのリキュール漬け
　　　トンカ豆のムース
　　　グリオットのピュレ

15、ヴェルヴェーヌティー


手が込んでいることを感じさせない、

手の込み方。

本当に食を愛する人を理解したメニューでした。

今後の展開も楽しみです。