『ポエシア3回目のレビュー』酒野夢蔵さんの日記

酒野夢蔵の酒場放浪記

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日記詳細

※ポエシアのレビュー文字数が満杯になったために,初回分~3回目のレビューを日記に移動しました。


徳島市新浜本町にあるイノヴェーティブなイタリア料理 poesia (ポエシア)。
勝浦川沿いにあるオシャレな外観に,店内は落ち着いた雰囲気のお店です。
この間,かなり間をおきましたので,進化した木津さんの料理が楽しみです。

店主は,野菜は生産者から直接仕入れ,魚は毎日沖洲市場で厳選したものを使用しており、
基本は地産地消で,徳島ならではの食材を存分に楽しめます。
また釣りもするので,魚の目利きもよく,徳島でも良質で新鮮な素材に感嘆されることでしょう。
徳島のイタリアンでは,野菜・魚の目利きと扱いはいち抜けていると感じます。
その食材の良さをシェフが存分に引き出した料理が自慢です。

・プロセッコ LAJARA
ビオロジック農法で栽培を行っており,プロセッコ種特有の青リンゴのような風味があり,
程よい酸のあるクリーンな味わいです。
このプロセッコには,サラダはもちろん,野菜を使った前菜や魚介類にピッタリの辛口スプマンテでした。

・洋梨のコンポート フレンチトーストとフォアグラにウニ・洋梨を載せて
過去のフォアグラと桃もいいのですが,洋梨との相性は抜群です。
洋梨というのも意外だったのですが,フレンチトースト・フォアグラ・洋梨ともいいですね。

・根室産新秋刀魚 カラスミパウダーと秋刀魚肝のヴィネグレットソース
この時期の私の大好きな根室産新秋刀魚です。クセもなく上品で肉厚なモノです。
ちりばめられている野菜とのヴィジュアルも相性もいいのですが,
秋刀魚肝のヴィネグレットソースが非常によくできています。
割烹系和食店でも新秋刀魚は内臓も食べるものなのです。

・ドライいちじくとココアのフォッカッチャ・ローズマリーのフォッカッチャ
シェフ得意のフォカッチャです。前回のくるみとレーズンも良かったのですが,
今回のフォッカッチャは双方ともにできがいいですね。
特にドライいちじくとココア,こういう組み合わせの妙も素敵です。
もっちり感や柔らかさや小麦の香りが図抜けています。
フワッとした生地にマッチしていますし,このフォカッチャは食べだしたら止まりません。
これはパスタなどとの相性の良いフォカッチャです。
県内のイタリアンでもカウンターや厨房においているのを見かけますが,
フォカッチャの質・味とは比べものになりません。

・スミイカ(ハリイカ)と秋トリュフ カリフラワーのピューレ添え
トリュフと言えばフランス料理の高級きのこ。
キャビアやフォアグラと並ぶ世界の3大珍味とも言われる高級食材のひとつです。
トリュフの本場は何と言ってもフランスはプロヴァンス。
そもそもトリュフは、石灰岩土壌の広葉樹のカシやナラなどの根に寄生する地下生型の菌根性きのこで,
豚やイノシシなどにより掘り出されなければなかなか発見されないものなのです。
そして,スミイカ(ハリイカ)はこの時期から春までの間,東京の高級江戸前寿司店で使われています。
イカ全般にそうなのですが,スミイカは新鮮さが必要なうえに仕込みが手間がかかります。
このスミイカの火入れも素晴らしいですし,それによって適度な柔らかさと弾力感を醸し出しています。
トリュフは「香り」が命ですが,スミイカとカリフラワーのピューレとのマリアージュは見事でした。

・天然鳴門鯛のポアレ 小松菜ソース あさりとオクラと木頭柚子のアイレ添え
鳴門海峡で釣れる天然鯛。鳴門海峡は渦という激しい荒波ゆえ,脂がのり,身が引き締まった鯛です。
その脂の良さを見た目より軽い小松菜ソースでサラッと合わせています。
レモンとあさりのエキスがよりよくしているのでしょうか。

・ジロール茸のタリオリーニ
天然キノコと言えば「秋」のイメージが強いですが,フランスでは春から夏もキノコの旬です。
日本でもおなじみのキノコですが,フランスには日本とは比べものにならないくらい多くの天然キノコが出回ります。
有名なのはモリーユ茸,セップ茸,トランペット茸,ジロール茸です。
このジロール茸はしっかりと締まった状態で,香りもよく立派なものです。
ソテーするだけでもジューシーでうまみの詰まったジロール茸,様々な食材とも相性が良いのです。
あんずの様な甘酸っぱい香りがするところから「杏子茸」とも呼ばれます。

・阿波牛イチボの西洋わさびの赤ワインソース ダナブルーのコロッケのおかひじき・四角豆・ユリ根添え
イチボとは、牛の臀部(オシリ)の先の肉です。ランプの先端でいちばん霜降りが入った部分がイチボです。
ミスジと同様に1頭の牛の中から取り出せる量が限りなく少ないものなのです。
まず,見た目はしっとりとした感じがします。
味は赤身肉のあっさり感と霜降り肉の甘み,そして柔らかさを兼ね備えています。
西洋わさびとはホースラディッシュのことです。西洋わさびは,すりおろすと大根のように白くなります。
西洋わさびの赤ワインソースで脂感を一変させ,
イチボの霜降りにとてもいい相性です。

ダナブルーはフランスの有名な青カビチーズのロックフォールを模して作られました。
あまり知られてはいませんが、チーズ生産の大国であるデンマーク産のチーズです。
ダナブルーは無殺菌の羊乳ではなく,牛乳の殺菌乳を使います。
このため、ロックフォール独特のクセはなく,素直な印象があるのですが,
青カビチーズらしいピリッとシャープな味わいが堪能できます。
初心者の方には少しキツめに感じられるかもしれませんが,青カビ好きの方にはぜひオススメしたいチーズです。
ダナブルーをコロッケにしていますが,阿波牛イチボにこれが最高のアクセントになっています。
付け合わせの徳島産の四角豆,これは実の断面がひだのついた四角形という特徴があります。
見た目がすごく変わった豆ですが, 味は意外とあっさりとしてサヤインゲンの様な感じです。
沖縄では「うりずん豆」,「ウリズン」とも呼ばれています。

・リコッタチーズのクレープとラムレーズンのアイス パンプキンソース
写真を見て欲しいのですが,デザートに関しては,関西のフレンチやイタリアンでは
見かけないシェフの独自性,アイデンティティがあります。

今回はグルメで食べ慣れた,味にうるさい知人の女性を強制連行してきたのですが,
最初の皿から感動していたようです。全ての皿に高評価を与えていました。
ヴィジュアルがよく,味もマリアージュがよく考えられており,
食べ慣れた女性に喜ばれるでしょう。

料理の芸術性と食べ合わせの感性がよくできており,
「ひとつのお皿の上に乗る素材同士のマリアージュ」が
味だけでなく,見た目にも楽しいイタリアンを堪能させて頂きました 。
フレンチ的な要素も感じられます。ここのシェフもフレンチ出身ですが,
イタリアン経験のみのシェフよりフレンチ出身シェフのイタリアンのほうがいいと思います。
コースの流れも実によく考えており,いろいろなことを緻密に皿に表現しています。

その皿には木津さんの人柄や誠実さがあふれています。
料理人はこうあるべきというべき模範を如実に表しています。
そして現在,大阪・神戸でも拮抗して闘えるイタリアンに成長しつつあります。
努力家で研究熱心ですし,東京・京阪神で有名店を食べ歩き,その経験を実践してチャレンジしています。
お客さんも東京や関西から食べに来られるかたも多いようです。
今回は要予約ですが,Cena Speciale(8,000円)のシェフが季節をお皿に綴るスペシャルコースを
オススメしたいと思います。ハレの日や記念日にもいいと思います。
また,カジュアルなメニューもありますので,バル感覚で手頃にお邪魔するのもいいでしょう。
徳島での正統派イタリアンはポエシアオステリアイマムラで決まりのようです。
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