『オリンピック雑感(その2)』ForestSpringWaterさんの日記

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<女子バスケット>
決勝戦、素晴らしいものを見せてもらった。20点差のついた最後のタイムアウトでトム・フォーバスHCは選手たちに「気持ちを入れよう。最後まで自分たちのバスケをしよう」と静かに語りかけ、彼女たちはコート上で、それを見事に体現した。4Qだけ見れば、日本の得点はアメリカを上回った。

前回のリオでは逆。中盤まで競っていても3Q、4Qで離されてしまう試合を目の当たりにした。

アメリカはベストメンバーを一部下げていたとはいえ、アメリカ相手に最後のQの得点で上回ったということは大きな意味があったと思う。

日本の今の女子バスケは極めてシンプル。
1.全員で攻め、全員で守る。常にオールコート!
2.40分間、全力で走り続けるだけのスタミナ、走力をつける
3.インサイドで勝負できる力をつけつつ、3ポイントを高確率で決めることで試合を優位に進める
→結果、世界のどんなチーム相手でも1Q20点、80点を取るゲームができる

これを徹頭徹尾貫いて、アメリカまで辿り着いた。ただアメリカはとてつもなく強かった。

厳しいマークで宮沢、林の3ポイントはほぼ完全に封じられ、ゴール下のペイントエリアでは攻守にわたり、日本は圧倒されていた。

アメリカがペイントエリアでボールを受けると7割近い確率でゴールを決められ、一方、そのエリアでの日本のシュートはアメリカのブロックで散々に撃ち落された。
(スラムダンクのゴリのハエたたきを現実世界で見せつけられたのだ。)

やりたいことを、ほぼ全くやらせてもらえない中でも、日本の選手達は折れなかった。一番印象的だったのは本橋。彼女の3ポイントや、奮迅の活躍が大きく寄与。90-75というスコアに繋がった。またキャプテンの髙田はプレイもキャプテンシーも素晴らしかった。長岡、三好、宮崎、オコエ、馬瓜、東藤、必ずしも今大会でスターティングメンバーに入れなかった選手達が一丸となり、あきらめず、攻守にわたり、献身的に、集中力を切らさずプレーしたことが本当に素晴らしかった。

準決勝まで、輝きを見せた町田、宮沢、林、赤穂は、厳しくマークされ、いいところを消されていた部分はあった。それでも今大会の彼女達の素晴らしさが色褪せることは決してない。

アメリカはこの決勝で五輪55連勝。25年無敗。攻守とも全く隙がなく、ゲームの流れを決して渡さない。あまりの強さに勝てるイメージは全く湧かなかった。そんなアメリカ相手に最後まで決してあきらめることなく、勇敢に戦った暁のメンバーは個人的には今回の五輪で最も大きな感動を与えてくれた。

本橋は「東京五輪までのことしか考えていなかった。このコートで自分の全てを出しつくすつもりだった」と言って、少し涙をうかべた。この言葉が全てを象徴していると思う。

蛇足だが、アメリカのしたたかさ、バスケット脳の高さを感じた1例が1Qの終わり方。残り30秒弱。この時点のスコアは20-14。日本のシュートが外れた後、リバウンドをおさえたアメリカは、時間を最大限使い切り、しかも3ポイントを決めた。日本が攻める時間はほぼなく、23-14で1Q終了。なるべく無駄なリスクは取らず、相手にどうやったら、効果的にダメージを与えられるのかを知り尽くしている。

<男子マラソン>
大迫選手のことをあまり理解していなかったと痛感。彼は自分の力を極めて客観的に把握し、できる全ての準備をし、少しでも上の順位でゴールするために最善を尽くしたと思う。「やり切った」と清々しい表情で語る姿に深い感銘を受けた。彼は「メダルを取る」といった、できるとも思っていない宣言を一切してこなかった。飄々としすぎていて、あまり好きではないというのが、今までの印象だった。

彼は、過去の記録や、自身の身体能力を客観的に評価して、自分がメダルを獲得することは極めて難しいということを十二分に理解し、それでも後輩たちがメダルを取るための礎となるべく、少しでも上位に入賞したかったのだと思う。

彼は「30㎞過ぎで2位集団と15秒くらい離され、追いつけるかと思って追ったが難しかった。無理をすれば大崩れするリスクがあり、順位を守る方向に切り替えた」といい、また「後輩たちに自分の姿をみてもらい、そしてもっと上にいってほしいと思っている。これからも陸上に関わり続けて行きたい。」と語っていた。深く深く物を考え、自分を高めることに集中していたのだと知り、敬意を感じざるをえなかった。

一方、服部、中村の両選手は非常に残念な結果。北島康介は「重圧の中、スタートラインに立つこと自体が難しい、過酷な競技だと知った。リスペクトする」等、好意的なコメントをしていたが、その前後で、前日本記録保持者の高岡氏や先輩オリンピアンのや尾形氏は「マラソンは練習した量が結果に表れる競技」とか「この場で戦う準備ができていなかったと思う。」との趣旨の非常に厳しいコメントをされていた。同じ競技の先輩として、今回の結果に納得されていない様子だったのは印象的。

もちろん、両選手とも、個人として最大限の努力をしてきたはずだが、この結果では代表を争った他の選手は浮かばれないなとの気持ちは拭えず。

<男子サッカー>
メダルを逃したが、男子競技の中で最も印象に残ったのはサッカー。パスの精度の高さ、個人のキープ力、ドリブルでの突破力、決定力等、随所に光るものを見せてもらった。一方で、ある意味絶望的な差も感じた。それは、ギリギリになった時、個としての力を超え、チームとして勝ち切る力の違い。準決勝の延長戦でのスペインの得点。3位決定戦でのメキシコのしたたかさ。今の日本には恐らくない。そして、どうやって獲得したら、いいのかも分からない。

実はベストコンディションであれば、日本選手の個々人の技量、パスワーク等は、世界と大差ない水準まで来ているように思う。またどんな国と対戦しても臆さずプレーするメンタルも持ち合わせていると思う。

一方、消耗した中で最後の最後、チームとして、どうやったら勝てるのかと考え、勝ち切る経験値は、まだ世界に及ばないのだと痛感させられた。(メキシコ戦の最初のPKはメキシコのファールのもらい方が巧み。また残る2ゴールもセットプレーからの失点。日本の3分の1のシュート数にも関わらず、常に試合を支配し続けていた。)

<女子卓球団体>
素晴らしい戦いを見せてもらった。3人とも本気で中国に勝つための努力をして、本気で攻めていた。ずっとLIVEで見ていて、ダブルスの1ゲーム目を先取した時は夢を見させてもらった。代表選考であれほど苛烈な争いをしていた石川と平野がチームとして、あれほど息の合ったプレーをして、中国からゲームを奪ったことは言葉に尽くせないほど素晴らしい。

ただ中国は強すぎた。日本を強敵だと認め、研究をし、全力で潰しにくるというか「本気の本気」で戦っていた。

日本は随所でいいプレーを見せたが、つば競り合いになると最後のところで常に1枚上をいかれてしまう。

伊藤はシングルスの準決勝に比べれば、競った戦いをしていたが、それでも孫は伊藤のことを研究しつくしていて、競り合っても勝ちきれる感じは全くしなかった。ダブルスも、平野のシングルスもいいラリーをした上で、最後は上を行かれるという構図。

マスコミは中国との差は縮まっている等と呑気なことを言っているが、むしろ、今後を含め、どうやったら中国に勝てるのかイメージが全く湧かなかったのが、非常に悔しい。

石川は「東京オリンピックまでのことしか考えていなかったので、今後のことは分からない。今はゆっくり休みたい。」と言っていた。非常に残念だが、石川が次の五輪に向け、今回と同じレベルのモチベーションを再度持つことは難しいのではないかと思っている。

今後、女子団体が、どういうメンバーになるか分からないが、個人的には今回はリザーブだった早田ひなの覚醒に期待している。彼女の身体能力は中国の壁に風穴をあけるポテンシャルを秘めていると思うので。

<4×100mリレー>
男子の100mの予選(全員が準決勝にすら進めず)や、リレーは予選8位とギリギリでの通過という流れを鑑み、さすがにメダルは難しいだろうとは思っていたが、それでも、5~6位には絡めるのではと思っていた。まさかバトンパスの技術をウリにする日本がバトンが渡らず、途中棄権になるとは予想だにせず。

バトンを受け取れなかった山県が「攻めた結果、これもスポーツ」と居直り気味にサバサバとインタビューで答えていたのには、個人的にはかなり違和感があった。その直後、先輩オリンピアンでリレーでのメダル獲得の先駆者である朝原さんは「これが今の短距離男子の実力。まず個で戦える力をつけるべき」と厳しく切り捨てていたが、まさにその通りだと思う。個人で誰一人準決勝にすら残れないメンバーがリレーで「金メダルを狙って攻めた結果」と言っても、説得力はないと思う。史上最強メンバー等と過度に持ち上げていたマスコミにも責任の一端はあると思う。

選考のルール上、言っても仕方のないことだが、100mの個人に桐生が出ていれば、少しは違う結果、流れになっていたような気がして残念。

<野球>
アメリカとの決勝戦の8回表の途中からTVでLIVEで観戦。金メダルの瞬間を見届けたが、不思議なほどに冷めた目で見ていた。野球のメンバーも金メダルへの並々ならぬ執念を持っていたのだと思うので、あくまで個人の主観にすぎないが、この五輪で全てを出し尽くそうとしている他競技の選手をあまりにたくさん見ていたので、相対的に野球のメンバーたちから、そこまでの熱量を感じなかったというのが正直なところ。
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